農業、特に水稲栽培をしているかたは育苗中に苗踏みをいう作業を行う方もいらっしゃると思います。麦にも初春に麦の苗を足で踏んでいく「麦踏み」という作業があり、それに対して水稲栽培の場合は稲踏とも言われたりします。
普通にお花を育てたり、他の野菜などを育てている方はびっくりされるかもしれません。確かに雑草などは踏まれて強くなるとどこかで聞いたことがあるものの、実際に手塩にかけて育てている作物をまだ苗の時点で踏んでいくのですから。
今回は水稲の苗踏みの方法や時期、効果や使うローラーなどのお話をしていきたいと思います。
年間様々な展示会で農業メーカーの方と話すことが多く、実際に農業器具や資材を扱っている管理人が売筋や営業の方から聞いた話をピックアップします。
育てた苗を踏む「苗踏み」とは?
苗踏みというのは読んでそのままの意味で、足や板、重さのあるローラーなどで稲の苗を踏むことです。
他にもホウキで掃くように行ったりやり方は様々ですが、どれも育苗中の苗に重さや刺激を与えてストレスをかけていきます。
動画を見ていただいてもわかるようにバキバキと茎が折れるほどの勢いで踏んでいくようで稲踏みをしたあとは実際に苗は折れ曲がっています。ですが実際に生長点は土の中なので問題はありません。
ですがそんなことして何の意味があるのでしょうか。
苗踏みの意味・効果とは?-水稲-
正直なぜそんなことをするのかわからないという方も多いと思います。簡単に結論から言うと、
苗を強く育てるため
なぜ踏むことで丈夫になるのかというと、苗をいじめてストレスを与えるとその刺激で発根を促進するエチレンという植物ホルモンが分泌されます。それにより
- 発根促進により根張りが良くなる
- 生長を阻害する物質なので苗が伸びすぎる徒長を抑える
- 生育が揃う
- 稲が倒れにくくなり収穫に良い影響がでる
などの効果があると言われています。ただここで注意していただきたいのは上の2つは科学的に根拠がありますが、下2つはあまり科学的には証明しづらいということです。
実際に色々な農家さんのお話などを聞くと、「実はそんなに効果を感じていない」という意見もあるようで、無農薬栽培を行っている人の中には苗踏みによって少なからず稲が傷を負うため、そこから病原菌が入るのが怖いからやらないという方までいらっしゃいます。
その反面茎が太くなったとか根張りが良くなったという意見も多く、効果の上の2つのように実際に科学的に説明できる効果もあるので、苗踏みをやる方が大多数となります。
苗踏みの時期
初苗踏みの時期ですが、早い人だと芽が0.5cmから1cmくらいの頃から苗踏みをはじめるようですが2cmから4cmくらいの背丈からやる方が多いようです。
その後も苗が葉がつくごとにやる人、5日から7日ごとにやる人、毎日やる人など様々な方法がありますが、苗踏みローラーなどを売っているメーカーさんは5日から7日ごとにしっかりと苗を茎から曲げることを意識して一度通過するのみというのを勧めています。
ただ足で踏んだり、板で押し付けている場合は苗踏み具合が足りないことも考えられますので、ローラーとはまた少しやり方を変える必要もあります。
例として啓文社さんが発表している作業目安を書いておきます。前提として20日苗は5回の苗踏み、35日苗は6~7回を目安に苗踏みをします。
- 1回目:発芽後の土落とし。発芽期より出して、午前中乾かし覆土表面が乾く午後にローラーで土落とし
- 5~7日に1回:2回目1.5葉(標準草丈3cm)、3回目2葉(標準草丈5cm)、4回目2.5葉(標準草丈7cm)、5回目3葉(標準草丈9cm)・・・
- 朝霜がある時に露落としを兼ねて行う
苗踏みにおすすめな苗踏みローラー
上でもお話したように足で踏んだり、板で押したり、ホウキで掃いたりして苗踏みをしている方もいますが現代では一般的にはローラーを使います。市販のローラーでやると作業効率や労力が全然違い何よりも均等に苗を踏むことができてムラができません。
ローラーは塩ビパイプに紐などを付けて自作する方もいらっしゃいますが、苗にストレスを与えるためある程度重さが必要ですのでそこを考える必要がありそうです。市販のローラーもペットボトルをくくりつけて重さを与えられるようになっています。
健苗ローラー・苗踏みローラー・育苗ローラーなど言い方はたくさんありますが、いくつかおすすめで人気の売れ筋商品をご紹介します。
育苗転圧ローラー TR-1000 1250 ケーエス製販
青い台のような部分には伸びてきた苗にはそれなりの重さが必要なため水を入れたペットボトルなどを乗せて重しにします。ローラーの幅が1000mmと1250mmの2種類あります。元々の重さも17kgと19kgとなり女性の方でも使える重さです。
健苗ローラー KBR-15W 美善
こちらは有名な山形の農業資材メーカーと農家さんが手を組み考案した苗踏みローラーで実際に農家さんの意見が入っているため、かゆいところに手が届く商品となっています。具体的には土落としの必要がなく、苗を傷つけすぎず病気を回避する作りになっています。
収納も持ち手が3分割されて短くなるので、場所をとりません。また柄は無段階調整。ローラー幅は1000mmで15kgの軽量となっています。年々改良されていてどんどん使いやすくなっているというメーカーのこだわりを感じるローラーです。
育苗ローラー IR-W1000 1250-50 啓文社
最近サイズ展開が増えて1000mmのJrと1250mmの2タイプがあります。持ちての部分の角度調整が5段階あり、使いやすくなっているという嬉しい機能付きです。16kgと17kgでこちらも軽量で使いやすい重さ!
2021年の3月に育苗ローラーの新商品が発売するようです。ローラー横幅750mmにしたところで重量も軽くなり女性や小規模農家さんにも使いやすいようになったローラーの新サイズです。全健苗ローラーメーカー最小で小さいサイズを要望する声が多く開発されたようです。
啓文社さんの育苗ローラーの比較が以下になります。啓文社さんはオプションで柄を長くするパーツも作っていてそれぞれ300mm/500mm/1000mm長くする延長パーツも売っています。オプションが充実しているのでカスタマイズしやすくかなりおすすめです。また最初から延長パイプ付きのものも売っています。
IR-W750 | IR-W1000 | IR-W1000-500 | IRW1250 | IR-W1250-300 | |
ローラー横幅 | 750mm | 1000mm | 1000mm | 1250mm | 1250mm |
ローラー径 | 220mm | 220mm | 220mm | 220mm | 220mm |
柄長さ | 1500mm | 2000mm | 2500mm | 2200mm | 2500mm |
角度調整 | 5段階 | 5段階 | 5段階 | 5段階 | 5段階 |
重量 | 12kg | 16kg | 16.5kg | 17kg | 17.5kg |
まとめ
さて今回は稲踏み、水稲栽培での苗踏みについてお話しました。
苗踏みは足や板で踏みつけたり、ローラーで転圧したりホウキで掃いたりと様々な方法がありましたが現在はほぼほぼ苗踏みローラーを使って行います。
苗踏みをする理由は苗にストレスを与えて丈夫に育てるためです。実際に効果があるとは科学的に証明されていない部分もありますが効果を実感している方も多いです。
苗踏みローラーを自作している方もいますが、色々考え市販の苗踏みローラーを買ったほうが効率がいいと思います。人気があるのは啓文社さんの育苗ローラーに美善さんの健苗ローラーなどがあり毎シーズンかなり売れて欠品してしまうことも多々あります。
稲をしっかりと強く育てるためにも「苗踏み」をやっていきましょう。他にも育苗に必要な資材はこちら