水稲栽培でお米を育てていざお米としてできたときにたくさん出る廃棄物である籾殻。廃棄物であるものの籾殻は作物を育てる土壌改良材としてよく使われます。
籾殻はそのままでもマルチング材としてや土壌に混ぜて水はけの良い土を作るために使う方もいらっしゃいますが、やはりくん炭にかけてもみ殻くん炭として使う事が多くなります。
今回はそんな籾殻くん炭をわざわざ作ってまで使う方を多くいらっしゃるのはなぜなのか、どんな効果があってどうやって使うのか、そして籾殻くん炭の作り方のお話をしたいと思います。
年間多くの展示会に出席し多くの農業資材メーカーさんとお話をする機会の多い管理人が、そこで聞いた話や自身が働く資材屋で得た知識などを踏まえてお話します。これで籾殻くん炭については困りません。
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籾殻くん炭の使われ方とは?
まずは籾殻くん炭を使う理由についてお話したいと思います。籾殻くん炭は農業では
- マルチング材
- 土壌改良材
- 種まき・育苗用培土
としてプロの農家さんはもちろんガーデニングや趣味の園芸でも使われています。土壌改良材と培土としては厳密には違いますがこれから説明する上で同じ意味として土壌改良材として説明していきます。
ちなみに籾殻はコイン精米機やライスセンターで無料もらえたり、農家さんの直売所で売っていることもあります。また最近はジモティーなどでも無料で手に入ります。
それでは説明します。
籾殻くん炭をマルチング材として使う効果とは
くん炭にしてもしなくても籾殻はマルチング材として使われます。マルチング材とはよく農業で使うマルチと言われるビニールシートのことです。籾殻はある程度しっかりとした硬さがあり土壌微生物などに分解をなかなかされないため実はマルチング材として優れています。
作物の根本3cmほどの厚みを敷き詰めることで保温効果・保湿効果そして雑草抑制の効果があります。くん炭にすることで籾殻自体が黒くなり太陽光を吸収しやすく畑の土の温度を上げる効果もあり冬は雪を溶かす程の効果もあるとの声もあり寒さに霜に弱い作物に効果があります。
ただ雑草抑制としては籾殻をばら撒くため多少隙間もあり気休め程度になりますが、その通気性で土の温度が上がりすぎるのを防ぐこともできます。土の上に敷き詰めているので土の植物への跳ね返りも防ぐ効果もあります。
培土・土壌改良材としての効果
培土や土壌改良材として使うのには次のメリットがあるからです。
それぞれ簡単に説明していきます。
籾殻はケイ素を含む
ケイ素は作物の根・茎・葉などの組織の表面を丈夫にして病原菌や害虫の侵入を防ぐ効果があり、更にはストレスの軽減にも効果がある要素です。例えば稲はケイ素を完全に含まないと組織が柔らかくなり光合成の為の受光効率も悪くなります。
籾殻くん炭にはそのケイ素が豊富に含まれており籾殻の約2割はケイ素分と言われています。
通気性・保水性・排水性が良い
籾殻くん炭に限ったことではないのですが、籾殻は多孔質といわれる小さい穴が無数に空いているもので土と比べると比重も非常に軽いです。その特性を利用して土に混ぜることで土に隙間ができて通気性と水はけが良くなります。
また籾殻には自重の680%の水分を吸収する能力もあります。それを利用して水分や栄養分を土に混ぜることで含ませることもできます。
土壌微生物の活性化
先程説明した土の通気性・保水性・排水性がいいということは微生物にとっても住みやすい環境を作ることになります。そうなると必然的に土壌微生物の活性化にも繋がります。
植物にいい影響を与える土壌菌は特に通気性と保水性のバランスが取れた環境を好み、大小の団子状の土が混ざりあった適度な隙間ができる団粒構造という土壌環境になり作物の栽培に適した土になります。また土壌菌は線虫などの繁殖を抑え根腐れや連作障害を引き起こす要素を減らすこともできます。
酸性状態の中和
土壌の酸性状態を中和するためには苦土石灰など使うケースが多いのですが、実は籾殻くん炭もpH8~10というアルカリ性物質になります。そのため酸性土壌の矯正にも使えて苦土石灰に比べるとアルカリ性は低いものの籾殻くん炭を使うことですぐに種まきや苗の定植ができるというメリットもあります。
一般的な作物はpH6~6.5の弱酸性を好むため、それに合わせて基本用土や庭や畑の土などと混ぜてpHを調整することができます。ただ気をつけなくてはいけないのはpHの配分を間違えてアルカリ性に土をしてしまうともとに戻すのは大変です。ちゃんと調整しましょう。
消臭効果
籾殻くん炭も炭のため多くの炭と同じように消臭効果があります。その原理は上でも説明した多孔質の為でその小さな穴にニオイを吸着させ閉じ込めるため腐葉土や堆肥の独特なニオイなどを軽減することができます。
土壌改良材としての籾殻くん炭の使い方・使用量
これだけ作物を育てるのに効果的な籾殻くん炭ですが、使い方はどうなのでしょうか。もちろん適当に混ぜて使うわけではありませんし、入れ過ぎはよくありません。pHを合わせるのはもちろんですが、籾殻くん炭は
用土の1割程度
を入れるのが目安となります。
例として鉢などで育てるときは鉢によく使う培養土が6、腐葉土が3、籾殻くん炭を1の比率で使ったり、畑などの土に混ぜる場合は1平方メートルあたり籾殻くん炭10L、堆肥を6Lで混ぜ合わて使いましょう。
ただ籾殻くん炭を使いすぎたときのデメリットも話しておくと、軽くてスカスカの籾殻くん炭は土との割合が高いと根が張っても籾殻自体に支える力がないため植物が倒れやすくなります。
籾殻くん炭の作り方は意外と簡単
そんな便利な籾殻くん炭ですが作り方は意外と簡単です。
といった流れとなります。注意点を上げていくと
籾殻はまずライスセンターやコイン精米機、農家の直売所などで手に入ります。燃やす場所はドラム缶など横からの風を遮蔽できて籾が飛ばないような燃やせる容器を用意します。コンクリートのブロックで四角く組んで場所を作っている方もいました。ただ風が強くない場合は遮蔽物なしで、ただ燻炭器の周りに籾殻を山積みにするだけという作り方もあります。
まずは火力が大切です。燻炭器をかぶせて籾を投入してすぐ周りが黒くなって炭化しているようなら火力は十分ですが、ならないようであれば藁などを燻炭器の中に入れたり風を起こして火力を増しましょう。
結構炭化してきたらよくかき回しましょう。そのまま放って置くとただの燃えカスになってしまいます。上へどんどん籾殻を投入するため炭化している下からよくかき回しましょう。
次に消火ですが、意外に火は消えづらいのでたっぷり水をかけましょう。かき回しながら小さな火種や煙も見逃さずに消しきらないとすべて燃えカスになるか最悪火事の可能性もあります。十分に隅々までかき回しこれでもかというくらい水で消火していきましょう。
大体80Lで2時間位かかります。根気よくもみ殻くん炭を作りましょう。こちらの動画がわかりやすいです。
もみ殻くん炭器
もみ殻くん炭器は一斗缶を改造してして作っている方もいらっしゃしますが、商品として売ってもいます。商品としては
- かぶせるタイプ
- 焼却炉型
の2種類があります。ちなみにモキ製作所の無縁炭化器は間違える方が多いですが籾殻くん炭は作れません。火力が強すぎてすべて消しカスとなります。
かぶせる一般的なタイプ
こちらは農家さんがDIYで作っている燻炭器と同じ形をしています。煙突のような形をしており一般的にホンマ製作所という煙突部材を作っているメーカーがつくっているステンレス燻炭器が有名です。
正直お値段も安く材料を揃えて自作するくらいならこちらを買ったほうが安上がりだと思います。
焼却炉型のくん炭器
こちらは見た目が焼却炉そっくりなので間違えて買う方もいらっしゃるかもしれません。商品目にちゃんとくん炭器と書いてあるものを選びましょう。
こちらは遮蔽物などを用意せずにこれだけでくん炭できるタイプになります。大きさの違いもありますが、ものに寄っては木酢液を作れてしまうものもあります。
まとめ
籾殻くん炭は作物を育てる際のマルチング材や土壌改良材として使うことができ、土壌改良材としては
などの効果があります。籾殻くん炭を使うときは大体用土の1割の割合で混ぜて使いましょう。混ぜるときはpHに要注意です。
意外に簡単に作れる籾殻くん炭ですが、燻炭器を使うことで更に簡単に作ることができます。