不織布ポットのルートラップポットをつかった根域制限栽培のメリットとデメリット!ポットの選び方

不織布ポットのルートラップポットをつかった根域制限栽培のメリットとデメリット!ポットの選び方

最近ぶどうなどの果樹を育てている果樹園の方や庭で園芸でぶどうなどを育ててみようとしている方は「ルートラップポット」や「エアーポット」という単語を聞いたことはありませんか。

果樹をて育てようと調べると必ず目にする言葉だと思います。そしてルートラップポットとよく一緒に出てくる言葉が「根域制限栽培」という言葉です。正直難しそうな言葉ですが実はそんなに複雑なことではありません。

果樹の根域制限栽培で使われるルートプラスポットとコンテナ栽培とは

個人での栽培が難しそうなぶどうやブルーベリーなどを家庭で育てることができる画期的な栽培方法のルートラップポットを使った根域制限栽培は、言葉では想像できないくらい初心者向けの栽培の方法でもあります。

今回はそんなルートラップポットを使った果樹や作物の栽培についてメリットやデメリットや注意点などをお話して行きます。

毎年多くの農業資材の展示会で資材メーカーさんとお話する機会の多い管理人が自身が働く資材屋でのお話を踏まえながら詳しく説明をしていきます。他の育苗ポットについては詳しくこちらの記事で書いています。

育苗箱・ポット・セルトレイで育苗する理由とは?どれを選べがいい?おすすめの選び方と使い方

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ルートラップポットと根域制限栽培とは?

ルートラップポットを一言でいうと不織布の鉢です。作物の苗などを育てる鉢=ポットといえば基本的にはプラスチックの物を思い浮かべると思いますがルートラップポットは不織布でできています。

不織布は水と空気は通しますが根を通しません。普通のポットだと水やりの際に水がポットの際に溜まりやすく根が水を求めてポットの側面や底にとぐろを巻く(ルーピング)ようになってしまいます。とぐろを巻く根は細く長くなるのであまりいい状態とはいえませんが、不織布であるルートラップポットは余分な水を排出するためそのような根になりづらくさらに酸素も入るため太い根になりやすくなります。

次によく出てくる根域制限栽培ですが、これも一言でいうと根の広がりを抑える栽培方法です。これにより木が大きくなりすぎるのを防ぎ果樹などの収穫も早めることができます。ぶどうの種類によっては2年目より収穫可能です。

ルートラップポットを使うメリットとデメリット

簡単にルートラップポットと根域制限栽培について説明しましたがそれによるメリットとデメリットは気になります。まずはメリットをまとめると

ルートラップポットのメリット

  • 小さなベランダでも育てられるほど木の大きさを制限できる
  • 作物といえば土地の土が大事というのを無視できる
  • ポットで育てるため移動ができる
  • 水と肥料の管理が簡単
  • 収穫が早い
  • 作物にもよるが植え替えがいらない
  • 木自体が小さくできるため栽培本数を多くできリスク分散ができる

簡単に説明していきます。

先程も説明しましたが根域制限栽培で根の広がりを抑えることで同時に木の生長も抑え限られたスペースでも果樹を育てることができます。またポット容器に苗を入れて育てることに成るため急な天候の変化などでも木を移動させることができるため天候による病気などを避けることができます。

またポットに入れて育てるという性質上、土地にもともとある土がどんな土でも関係ありません。つまりどこでも果樹を育てることができます。ポットに入れる土さえ厳選していれば土地や土壌の制限を受けることがないのが大きなメリットになります。

ルートラップポットは上でも説明したように水はけがいいため水の管理も簡単で根腐れなどはしにくく初心者でも育てやすいというメリットもあります。肥料もポットごとに入れていくため土地全体の土の管理をしなくてもいいのが嬉しいところです。

そしてスペースを節約できるため栽培本数を増やしやすく土などもポットごとに管理のため、台風やブドウ虫などから全滅を避けやすくリスク分散ができるのが生産者にはかなりのメリットとなります。

ルートラップポットでの根域制限栽培で育てられた作物はポット内で空気と水が調整されて健康で丈夫な太い根が育ち、根の分岐が促され細根が生い茂るため樹の生産性も上がり露地植えより高品質な果実が通常よりも早く収穫できます。

次にデメリットを上げていくと

ルートラップポットのデメリット

  • 苗木やルートラップポットの数を多くしがちなため費用がかかる
  • 木自体の寿命が短くなると言われている
  • 土の管理ではなくポットごとの管理になるため簡単だが数が多く手間

先ほどメリットで本数を増やしてリスク分散ができるのがメリットとお伝えしたのですが、本数を増やすということはつまりは苗木とルートラップポットの数もその分購入しなくてはいけないため、果樹農家さんなどは費用がかかってしまいます。ただ家庭菜園などでちょっと育てるぶんにはこれは当てはまりません。

根域制限栽培によって限られた空間に根が密集しやすくなるため木が短命になると言われています。根が密になりすぎると5~10年で枯れてしまうという説もあります。とはいえまだまだ根域制限栽培は農業分野では新しめの栽培方法のためデータが集まりきってはいないので確実に短命になるとは言えないという説もあります。大体ぶどうだと30~40年位が寿命ですが、今のところ30年の木は確認されているとのことです。

そんな新しく画期的なルートラップポットですが選び方があります。次はそれを説明していきます。

ルートラップポットの選び方

次にルートラップポットの選び方です。ルートラップポットといえば一番有名なのがハセガワ工業という宮崎県にある農業資材メーカーさんが有名です。そちらのラインナップを軸にお話していきます。

まずは不織布の厚さは10A・20A・30Aの3つのタイプがあります。それぞれ厚さが

10A20A30A
厚さ0.3mm0.4mm0.5mm
用途挿し木・台木育成/果樹1~3年果樹栽培果樹栽培

と分かれています。10Aは6号から60号までのサイズに分かれており小さいサイズは挿し木鉢上げや台木育成などに使われれ大きめのサイズは果樹1~3年生や大苗育苗に使われます。そして20Aや30Aはマンゴー・なし・柿・ぶどう・いちじく・レモン・みかんさらにはバナナなどの果樹栽培やアスパラやじゃがいも栽培などに使われています。

それではサイズを見ていきましょう。まずは10A

ポットサイズ(cm)容量(L)
6号18×182
7号21×205
8号24×258.5
10号28×3015
11号33×3523
20号35×3525
30号40×4040
40号45×4060
50号50×5080
60号60×60130

次に20Aタイプです。

ポットサイズ(cm)容量(L)
2035×3525
4540×3545
5047×3550
6547×4065
8057×3580
10057×40100

最後は30A

ポットサイズ(cm)容量(L)
4540×3545
5047×3550
6547×4065
8057×3580
10057×40100
20080×40200
400105×50400
ルートラップポット 10Aシリーズ
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ルートラップポット 20Aシリーズ
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ルートラップポット 30Aシリーズ
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使うべきルートラップポットサイズの割り出し方

みかんやぶどうの3~5年、ブルーベリーなどは30Aの100Lがよく使われています。ある農家さんは枝の広がりと根のバランスでポットサイズを決めているとのこと。そちらの農家さんのサイズ選びの公式は

10平米:150L=X:Y

です。簡単に言うと真上から見た木の枝の広がりを縦x横で平米数を計算し、10平米だと150Lのルートラップポットを使っているので、Xに木の枝の広がり面積を入れればYの使うルートラップポットサイズが導き出されるというもの。

便利な指標なので動画も貼っておきます。

そこから6.7平米の広がりであれば100Lサイズです。ただし50Lサイズの場合計算上は3.3平米となりますが、4平米で50Lのサイズを使ったほうが生産性が上がったとのことで指標にはなるものの微調整は必要なようです。

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ルートラップポットの耐用年数と使い方の注意点

さてここまでルートラップポットについて話してきましたが、苗木の数だけポットも使わなくてはいけないためどれくらい持つのか気になりますよね。まず前提としてルートラップポットは使い回すことは可能です。そのうえで

0.5mm厚の30Aタイプであれば30年以上持つこともあると言われています。とはいえ一般的には

  • 30A:20年ほど
  • 20A:5~6年ほど
  • 10A:1~2年ほど

と言われています。もちろん使用環境などにもよって変化してくるため防草シートなどとそこらは一緒ですね。使いまわしをする際は苔をよく落としましょう。苔が生えていると空気や水の行き来が悪くなりルートラップポットの本領を発揮できません。

ルートラップポットでの苗木の植え方

ルートラップポットに苗木を植える際の流れを簡単に説明します。150Lの場合

  1. 苗木に水を12時間ほど吸わせる
  2. 根の先にササクレや折れているものは剪定する
  3. 土110Lに対し30%の肥料を用意
  4. 50Lほど土を入れて肥料を30%蒔く
  5. 残り土を110Lまでいれ肥料30%混ぜてから真ん中を山状に
  6. 山状になった上に苗を根を円状に広げて置く
  7. 残りの土をかぶせて肥料を散布

土は色々ありますが、一部の農家さんはバークライトとパーライト・牛糞を1:1:1だったり真砂土80%:バーク堆肥20%で土を作っていました。肥料は有機石灰やヨウリン、12:5:6の化成肥料やエコロングという肥料を使っていました。

バークライト(バーク堆肥)
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パーライト
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エコロング
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まとめ

ルートラップポットについてのまとめです。ルートラップポットは不織布でできた鉢のことで不織布を使っているため水はけがよく空気をよく通す根の成長に最適な効果を与えることができます。

それだけでなく省スペースで育てられ、高品質な果実が通常より短期間で収穫することも可能です。また土地に土による影響を受けないためどんな場所でも作物を育てられて鉢ごとに管理をするため病気や天候で全滅にもなりにくいという利点があります。

耐用年数も以外に長いので苔の掃除だけしっかりして何回も使いまわしができます。サイズは上で説明していますので計算してみましょう。

他にも根域制限栽培にはコンテナ栽培やエアーポット(ルートプラスポット)などを使ったものがあります。

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