ビニールハウス内の農作物の受粉作業に蜂を使っているところはたくさんあります。ミツバチにセイヨウオオマルハナバチ・クロマルハナバチなど蜂の種類は農家さんなら聞いたことがあるのではないでしょうか。トマトやナスなどは人工的にホルモン処理で受粉させるより蜂に受粉させたほうが実がなりやすく、さらに空洞果といわれる実が大きくならず隙間だらけの実が少なくなり、状態のいい実が沢山収穫されやすいと言われています。
今回はそんなトマトやいちごなどの受粉で注目を浴びる蜂についてのお話です。ミツバチやセイヨウオオマルハナバチ、クロマルハナバチなどの受粉用蜂の種類や販売されている場所・効率よく蜂に働いてもらうためにはどうしたらいいのかお話します。これを読めば受粉用の蜂についてバッチリ。
年間数多くの農業系の展示会で沢山の農業資材メーカーさんや代理店の営業さんとお話する機会の多い管理人が自身が働く資材屋での売れ筋やお客さんからの声を踏まえてお話します。
ビニールハウス内で使われる受粉用蜂の種類
ビニールハウス内での受粉作業で使われる蜂の種類はミツバチ・セイヨウオオマルハナバチ・クロマルハナバチだったのですが、その中の1つセイヨウオオマルハナバチは2006年に特定外来種指定となり使うのに許可が必要となりました。昔使ってたのに気づいたら使われていなくなったと思う人も多いのではないでしょうか。
次にミツバチ。こちらは日本で受粉に使われているのセイヨウミツバチとなります。ニホンミツバチはまず飼育している人があまりいないことと逃げ出す可能性が高いとのことで使われないようです。
そしてクロマルハナバチ。こちらはセイヨウオオマルハナバチと名前が似ていますが、日本の在来種で届け出は必要なく多くの農家さんが現在使っています。
では今使えるミツバチとクロマルハナバチはどっちが受粉で使う蜂としてはいいのでしょうか。
ミツバチについての記事はこちら⇒果樹園やビニールハウス内受粉交配に使われるミツバチの飼育の注意点と選び方
ミツバチとクロマルハナバチどちらを使うか比較
結果から言うとビニールハウス内はクロマルハナバチ、外はミツバチです。
農家さんも基本的にビニールハウス内受粉だと使われているのは圧倒的にクロマルハナバチです。クロマルハナバチを使うメリットや理由を上げると
- ミツバチは蜜がある花にしかこないがクロマルハナバチは花粉だけの花にも来る
- ミツバチは蜜を集める際に花粉が体につくが、クロマルハナバチは花にぶら下がって振動して花粉を体につける
- ミツバチよりクロマルハナバチのほうが一匹あたりに回る花の数が多い
- 生活圏がもともとミツバチより寒いところのため寒さに強い
- 温厚と言われるミツバチよりもさらに温厚
- 在来種で届け出が必要なし
- ミツバチはビニールハウス内で飼育すると極端に寿命が縮まる
- ミツバチより手に入りやすい
などの理由があります。1つずつ簡単に説明します。
ミツバチの活動範囲は数キロにも及びます。その点クロマルハナバチは数百メートルでビニールハウス内での活動に適しており、ビニールハウス内でミツバチを飼うと消耗が激しく寿命が短くなると言われています。
また性格も温厚でめったに人を刺すことはなく、いちご農園のようにお客さんなどが訪れやすい場所でもその性格のためか好まれて使われています。とはいえ蜂は蜂で全く刺さないわけではないですので攻撃したりしないようにしましょう。
よくクロマルハナバチが使われている最も大事な理由がミツバチが蜜のある花にもぐりこんでその際に体に花粉が勝手にくっついて受粉させるのですが、クロマルハナバチは蜜がない花でも花粉を集めに飛び回り、さらに花にぶら下がって体を振動させ花粉を集めるのでトマトのように振動させて受粉させる作物にピッタリな蜂となります。
クロマルハナバチの生活圏はミツバチより寒い地域でミツバチが飛ばないような気温や日光が少なくても動いてくれるのでいちごなどまだ寒い時期に受粉をしなくてはならない作物にぴったりです。ミツバチより働き蜂の数が少ないのですが1匹あたり30分に約300花に訪れるので受粉に大いに活躍してくれます。
クロマルハナバチはどこで買える?
そしてなんとクロマルハナバチはインターネットでも販売しており手に入りやすいのがなによりも魅力的です。養蜂家に連絡をとったり探す必要がなくインターネットでワンクリックで買えます。有名なメーカーだとアグリセクトさんのクロマルハナバチが有名です。
ただ以下の点に注意
- 生き物が宅急便で配送するためすぐに受け取らなくてはいけない
- クロマルハナバチの習性などを予め知っておく必要がある
- 間違った飼い方をすると働いてくれない
などがあります。インターネットで販売されている蜂を買うと誰も教えてくれません。「まったく蜂がでてきてくれない」「クロマルハナバチが働いてくれない」というのはよく聞きます。ですので、クロマルハナバチの習性というものをよく知っておく必要があります。
次からはクロマルハナバチを受粉に使う際の注意点をお話します。
販売されているクロマルハナバチを買う際の注意点
ビニールハウス内の受粉用にクロマルハナバチをインターネット販売で買うというのは今ではとても当たり前で珍しいことではありません。ですので全く蜂の習性を知らずに買ってしまう人も多くいます。ここでクロマルハナバチが元気に受粉をしてくれるための注意点を知っておきましょう。
まずクロマルハナバチの弱点は
- 暑さに弱い
- 農薬や殺虫剤などに弱い
という点です。2番めは生き物なので当たり前ですね。クロマルハナバチを販売しているアグリセクトさんなどは農薬を使った際の影響について発表しています。例えばエコピタ液剤は乾いた後はほとんど影響ないとしていますが、オルトラン粒剤は30日はすぎてから蜂を使ってくださいとなっています。
クロマルハナバチが活発に活動するのが17~27度と言われており、30度以上で直射日光だと全滅の恐れもあります。ビニールハウス内は30度以下にしましょう。
巣箱を適温に保ってくれるクロマルハナバチ専用飼育箱用温度管理器もアグリセクトさんであります。ただこちらの恒温箱ですが、アグリセクトさんで販売している蜂箱サイズにしか対応しておらず、アグリセクトさん以外で蜂を買った場合サイズが合わない可能性が高いです。
クロマルハナバチの飼育下のビニールハウス環境
クロマルハナバチを飼育するには天候などの他に以下の注意点が必要となります。
- 蜂が逃げ出さないようにネットがあるか
- UVをカットするフィルムをつかっていないか
クロマルハナバチは5mm程度の穴や隙間があれば外へ出てしまうためしっかりと逃げ出さないようにネットを貼っておく必要があります。4mm以下の目合で網目が広がらないネットがベストです。またビニールハウス内の換気などにも十分注意しましょう。窓や扉・換気扇からも逃げていきますので開口部には必ずネットを張りましょう。
そしてUVカット。クロマルハナバチは飛行する際に紫外線をみて飛んでいるのでUVカットフィルムを使うとクロマルハナバチの活動の妨げになってしまいます。UV透過率が高いフィルムを使用しましょう。
クロマルハナバチの行動による注意点
クロマルハナバチも生き物なので食べ物が必要です。もちろん受粉目的である花粉がエサとなるのですが、まだ花粉が少ない時期にクロマルハナバチを飼育すると食べ物が足りない可能性がありますので、導入初日や花粉が少ない時期はエサを与えましょう。
巣の隅や出入り口の下などに幼虫の死骸が多い場合、巣の中の食物が少なく口減らしをしている可能性があるで餌不足の可能性があります。よく観察しましょう。
クロマルハナバチ導入から巣の終わりまで
導入してから大体通常2~7日で飛び始めます。それでも飛び立たない場合は環境や気温を見直してみましょう。巣の寿命は大体2ヶ月ほどが基本となります。
蜂な雄蜂が飛び始めると巣が終わりの時期に近づいているといいますが、クロマルハナバチは比較的早くオスが動き始めるため雄蜂が飛び回っていても巣の寿命というわけではないです。
クロマルハナバチを使用し終わったらしっかりと殺処分をすることが必要となります。箱ごとビニール袋に入れて蒸し込んで完全に死滅させましょう。在来種とはいえ今もともといなかった地域にクロマルハナバチがいることが問題となっていて国内在来種と呼ばれているようです。地域の生態系に影響を及ぼす可能性があるためしっかりと殺処分をしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。クロマルハナバチは飼育にある程度気をつけなくてはいけないものの、現在ではビニールハウス内の受粉をしてくれる蜂としてトマトやいちご、ナスなどの農家さんにとても重宝されています。
とはいえ条件によっては全く働きません。事実買ったクロマルハナバチが巣箱から出てこないというのはメーカーさんいよくある質問とのことです。記事でも説明しましたがそんなときは上記で書いた条件を見直してみましょう。
また簡単にインターネットでも販売されているクロマルハナバチですが、生き物ですので基本的にはすぐに受け取れるようにしておきましょう。長く受け取らず、受け取ったら死んでいたというのも昔聞いたことがありますが、当たり前です。そして可愛そうですが役目が終わったら必ず殺処分をお願いします。
以上責任と環境を守ってクロマルハナバチを有効に使い農作物を育てていきましょう。ミツバチについてはこちらの記事へ