今まで何回か板金鋏と掴箸について記事を書かせていただいて、更にいろんな情報や実際に触ってみてわかった各ブランドの特徴やメーカーとしての会社としての印象をまとめてみました。
今回は鋏と掴箸に限定してお話しようかと思います。それ以外になるとかなりメーカーが広がってくるので。この記事は新情報が入り次第随時更新していこうと思います。
それでは今回は板金工具のお話となります。多くの建築資材のメーカーさんや工具メーカーさんの展示会に赴き、各メーカーの営業さんや仕入れ代理店さんの営業さんからお話を聞く機会の多い管理人がマル秘話をお話します。
板金工具鋏・掴箸のメーカー
種光
こちらの種光さんは新潟の金物の町三条にある刃物メーカー「ツボタ」で作られている板金鋏のブランドになります。
かなり職人気質のブランドで社長さんもザ・職人という形です。こちらは基本の形を機械で製造して仕上げを職人さんが行うという形のスタイルで鋏が作られています。
基本は素材別にわかれています。
それぞれの鋏の鋼材についてはこちらの記事で詳しく書いております。
鋏のシリーズを簡単に説明すると
種光の鋏シリーズ特徴
- スーパーハイス21ゴールド:刃の硬度と粘り・強度に優れています。刃先のサビには弱い
- スーパーハイス21:ゴールドより若干刃の硬度に劣りますが、それでも他に比べると高い硬度を持っています。刃先のサビにやはり弱い
- ZDP189:刃の硬度・強度が高くサビにも強いが粘りがあまりなく靱性が低い
- ビックカット:サビとボディの強度が高めだが刃の硬度はそれほど高くない
- SLD2:粘りがよく他もバランスが取れたタイプ
- SLDスーパーハード:刃がサビに強いが若干硬度が低い。
- SLDスタンダード:刃がサビに強く粘りもあるが硬度が低め
次に紹介する盛光さんとも関わりが深いブランドで、実は盛光さんも種光さんも原型はツボタで作られている鋏をそれぞれのメーカーで仕上げているので元は同じということになります。
また種光さんの場合掴箸は「東京一光」というメーカーさんから仕入れて名入れをしてます。これが一部なのか全部なのかはわかりません。
汎用性がとても高く種類がたくさんあるのでどんな鋏でも探せば種光さんで大抵は見つけることができます。また元の「ツボタ」という会社は園芸鋏なども作っているハサミに関してはまさにプロの職人のメーカーでとても評価も高いです。
大抵は在庫をしているみたいですが、素材などで欠品していると大体1~2ヶ月くらいは仕入れまでに必要となります。ただ掴箸は東京一光から仕入れているためない場合は半年くらいは仕入れにかかります。
おすすめは定番でもあるビッグカットシリーズとスーパーハイス21とスーパーハードホワイトシリーズです。これらが特に人気で売れ筋でもあります。
ただ注意点が元が機械で作られているとはいえ仕上げは職人さんがしているので一本一本違いがあります。もし種光を使っていて全く寸分も違わず同じものは他にはありません。これは全ての板金工具鋏・掴箸メーカーに言えることです。
最近出たコブラシリーズについてはこちら
盛光
こちらは種光とも関わりの深いメーカーの「盛光」です。とても大きな会社でありとあらゆる板金工具を扱っていて自社で作っているものや他のメーカーのものまで扱っています。
ルーフにつかう折り曲げ器などもあつかっていて鋏と掴箸だけではありません。先程行ったように種光とも関わりが深く展示会などに行くとツボタの社長さんもいて種光の板金バサミなども購入できます。他にも東北エスパルや電気板金バサミのサンワさんもいらっしゃいます。
ハイス・SLDなど素材別に多くの鋏があって、使う金属によって選ぶ形になります。最近出たオメガシリーズなどは特に評価が高く人気のある鋏です。お値段が高いのに売れ筋といっていいほど売れる鋏です。
他にもゴールドや紫のチタンコーティングがしてある高級感のある鋏もあって、オリジナリティもある面白いメーカーです。もちろん板金メーカーとしてもしっかりしていて、エンドユーザーへの対応もしっかりしていて直ぐに対応をしてくれる会社です。そこらへんは大きな会社ほどしっかりしているイメージがあります。
買った後のケアなども心配がないおすすめのメーカーです。何かしら板金工具が必要な場合は盛光さんで探すと見つかるという安定感もあるメーカーです。
元はツボタさんで作っているとはいえ仕上げはそれぞれのメーカーなので違いはやはり出てくるのでそれぞれファンは多いようです。こちらも常時基本的に在庫をしていて大きな会社な分在庫も豊富であまり欠品がないのも納期を気にする方でしたら嬉しい限りです。
また掴箸も人気で平摑みや菊絞りなど売れています。全体的にしっかりしている職人気質というよりはメーカーとしての会社という印象の板金メーカーです。
直徳
直徳さんはHPからさっするに非常に職人気質なのかなと思いきや、板金メーカーとしてとてもしっかりとした会社です。盛光さんのように様々な板金メーカーとの付き合いもありカタログを見ても他社ブランドのものは盛光のカタログにものっているブランドばかりです。
ただ盛光や種光と違うところは鋏と掴箸がすべて完全手造りというところ。
これは大きな違いでものづくりに関しては非常に職人気質の高いブランドと言えます。そのため全体的なお値段は種光や盛光と比較しても高めの設定です。
また元が一緒だからか盛光や種光の鋏の滑り止めはトルネードという螺旋の溝ですが、直徳はムーングリップという波々になっている構造が面白いです。
おすすめとしてはタフライト・ガルバカット・ブルーギガが特に人気のあるシリーズとなります。その他にも金印や銀印などさまざまな特徴を持った鋏などがあります。切るものや耐久性をみて選びましょう。
掴箸も非常に沢山の種類が揃っており、こちらも素材や形状によって選べます。人気ももちろんあって掴みも鋏も人気というメーカーはやはり直徳の造りが非常にいいからでしょう。
そしてもちろん一本一本が手造りのため納期が安定しません。ある程度在庫をしているようなのですが、やはり手造りと聞くと皆欲しくなるのかとても人気なブランドで事実造りもしっかりしています。ただ欠品しているとできるまでに2週間から3ヶ月程待たされることも当たり前です。
ただそれでも買う人が多いのは一重にしっかりした作りなのと信頼できる後ケアでしょう。もし余裕があるのであれば一本は直徳さんの鋏や摑みを持っておきましょう。非常におすすめです!
またアフターフォローが本当にしっかりしています。会社として成り立っている分事務や営業さんもいて不具合や交換などの対応もできる限り迅速に行ってくれ手造りのこだわりをとても感じることができます。
君萬歳久光
ここはホームページがありません。とにかく職人気質な鋏メーカーで売っているところもそんなに多くはないので目にする機会も少ないかもしれません。情報も少ないです。
なんでも久光は面白い逸話があって有名な話ですが、日露戦争の時代、将軍が203高地攻略の際にどうしても突破出来なかった敵陣の鉄条網を久光の鋏でたち切ることが出来た事から、その感激を銘としたというお話があって、以来この名で呼ばれる様になったらしいです。
直徳と同じようにこちらも職人が一本一本手造りをしている本格的な鋏で今は掴箸もいくつかあります。お値段もやはり少し高めですが職人の間では非常に評価の高い鋏のようです。
楽天などを見ると納期が不確定と書いてあることから、直徳以上に在庫をしていなく供給が安定しないことが読み取れます。しるかぎり大きな会社でもないので作る人数や買った後のケアも謎ではありますが、伝説的な鋏のため人気があります。
板金屋なら手に入れておきたい、持っておきたい男の心をくすぐる伝説の一本になることは間違いないでしょう。
東京一光
こちらは君萬歳久光とは違って今度は掴箸だけをつくっているブランドです。
HPを見るとわかるように新潟の三条にある水野製作所という会社のブランドのようで水野製作所は斧などを作っているメーカーのようです。
こちらも非常に高品質な掴箸を作るメーカーで、先に上げた種光の掴箸もこちらのものに種光の刻印をしたものとなります。
種類もそこまで多いわけではなく素材やメッキ方法で分かれている形になります。もちろん下のサイズしかないわけではありません。
現在一人の職人さんしかおらず、一人で作っているため手に入るまでかなりの時間がかかります。ただHPを見てもわかるように高品質で見た目もきれいで美しい芸術品を見ているような鋏なのでだれもが見とれてしまいます。
扱っているところは限られていそうですが、種光の掴箸を手に入れることができれば同じものではあるということになります。種光さんも大量に発注してある程度在庫をしているようです。ただ東京一光の刻印はないので、刻印が欲しい場合は東京一光の掴箸を買う必要があります。
職人さんもたまにお忍びで板金工具の展示会に行かれるそうですが、よく最高の掴箸として「いい掴箸が入りましたよ」といってでてくるのが、まさしく東京一光さんの掴箸ということも多々あるようです。
非常に手に入りづらい一本ですが、掴箸をよく使うのであればぜひとも持っておきたい芸術品ともいえる一本ですよね。まさに至高の掴箸です。
種光と盛光の違いとは
最近種光と盛光の違いで記事に飛んでくる方が多いようなので少し書かせていただきます。
上でも書かせていただいたとおり種光さんと盛光さんは新潟県にある三条市のツボタさんという他に園芸鋏などを作っている種光さんの親会社のような場所で元が作られています。ですので造りとしては一緒です。
ただそこからいちばん大事な切れ味に関わってくる仕上げがそれぞれのブランドで行われています。そこで各々のブランドの特徴が出てくると思います。といってもやはりこの2つのブランドは似通ったイメージがあります。
職人気質が高くなれば高くなるほど合う合わないの差が大きくなるもので、さらに全て手造や手仕上げなので全く同じというものがありません。
気をつけよう板金金切鋏のサイズ表記
実はこれ疑問に思った方もいるのではないでしょうか。例えば柳刃240mmなのにカタログ表記全長260mm。
どっちなの?
と思いますよね。これについて面白い話が聞けたのでシェアします。鋏のサイズと全長のサイズが違うのはズバリ柳刃240mmというのは型番のようなものだからです。
その昔サイズを寸で行っていた時代の名残で240mmで作っていた物が今は260mmになるようです。ただ昔ながらの呼び方で読んでいた方は8寸は240mmで8寸の鋏が必要な場合240mmで探すため、全長は260mmだけど昔使っていた240mmはこれですとわかりやすいように柳刃240mmという表記をしているようです。
金切鋏や掴箸の処分や買取依頼
金切鋏は特に職人工具の中でも自分の手に馴染むメーカーが一つだったり、更に基本手造りや手仕上げのため同じブランドで同じ鋏でも何か違うと感じることもあるとても繊細な工具です。
もちろん同じブランドで同じ鋏の場合はメーカーに連絡して調整をしてもらいましょう。こちらは買った店舗に連絡しても事細かに詳細を伝えることができず失敗するかもしれません。ただ結局は経由として挟まなくてはいけない場合もありますが、まずはメーカーにきいてみましょう。
またブランドが合わなかった場合は返品も手ですが、ショップに寄っては職人手仕上げのため、ほぼ受注生産となり返品ができないこともあります。そんな場合や板金業界から離れる場合などはブランド物の高級金切鋏や掴箸などは売ることもできます。
金切鋏や掴箸の中古品を売ることができる工具買取についてはこの記事で詳しく書いています。
⇒不要になった工具を売りたい!失敗しない中古工具の売り方【中古工具買取】
見積もりだけも無料でできるため不要になった工具などがある場合は試してみましょう。
まとめ
この記事は今回で終わりではなく、どんどん更新していき新しい情報を書き加えていきたいと思います。板金工具は非常に繊細で近いもので行ったら包丁のようにプロが使うのと素人が使うのではまるで切れ味や長持ちさが変わってきます。
切れ味が悪くなってきた場合は刃研ぎや調整をしてくれるブランドがほとんどです。種光さんや盛光さんは自分のところのメーカーでなくても刃研ぎや調整をしてくれますがオリジナルブランドよりは値段が高くなります。買った店舗やメーカーに問い合わせてみましょう。
好みのメーカーを見つけたのであれば、そのブランドから浮気をしないほうがいいと思います。
板金金切鋏の基礎はこちら
掴箸はこちら