溶接の光って見てはだめと言われるけどなぜ?
溶接時に出る光のことをアーク光といいます。よく溶接の光を見てはダメ!といいますよね。聞いたことはあって知ってはいても、なんで見てはダメなのか、見るとどうなるのかって実は知らなかったりしませんか。
アーク光には「可視光線」といわれる眩しく見える光の他に、聞き覚えのある「赤外線」と「紫外線」が含まれています。それらをたくさん見てしまうと目がゴロゴロし涙が止まらなくなります。これは角結膜炎と皮膚炎が目に起こっていて数日は治らないこともあります。また可視光による青光障害は資料を低下させたり、視野の中に見えない領域ができてしまうのが数週間から数ヶ月残ってしまいます。障害としては白内障、皮膚に浴びることでの皮膚がんなどの可能性もあります。
つまり溶接を仕事にしている人は溶接光からいかにして目や皮膚を守って仕事をするのかがとても大事です。
溶接のアーク光から守るためには
溶接するのにアーク光を出さないわけには行きません。必ず出ます。ではどうやってアーク光から体を守りつつ仕事をするのでしょうか。
基本的には溶接面をつけます。
溶接といえば想像できるのはアーク光と手にお面をもって遮っている姿ではないでしょうか。そのお面を溶接面といいます。顔全体を隠せるお面に目の部分には遮光プレートと言われるガラスが付いています。そちらの遮光ガラスは普段は真っ黒なガラスなのですが、アーク光は光ととても強いので、アーク光だけが見えます。でも実は溶接面や遮光ガラスにも色々種類があります。そちらをご説明しましょう。
溶接面の種類
溶接面には大きく分けて2種類のものがあります。それは手で持つタイプか頭でかぶるタイプか。基本的に真っ先に思いつくのは手で持つタイプですよね。実際現場でもほとんどの方が手に持つタイプの溶接面を使っています。
手持ち溶接面
なによりもメリットは値段。圧倒的に安価でだいたい2500円くらいから買えちゃいます。基本的に目の部分の遮光ガラスは取り外せて、現場にあった遮光率のものを入れて起きます。その時遮光ガラスを守るために普通のガラスを付けてそれから遮光ガラスをつける場合がいいと思います。
ただデメリットもありまして、まずは片手で常に持っているため手が疲れるし自由にならない。これはずっと持っているのだからそうなりますよね。そしてもう一つのデメリットが素人や経験の浅い人には扱いが難しいこと。せっかく目を守るために遮光面をつけるのですが、基本ガラスが真っ黒なため、溶接機を動かして溶接するときだけ手でガードするのでアーク光がでるタイミングが良くわかっていないと結局アーク光を目で直接見てしまうことです。それでは意味がありませんよね。
メリット
- 安い
デメリット
- 素人だと扱いが難しい
- 手が疲れてくる
- 両手が自由にならない
ダメじゃんと思う方もいらっしゃいますが、匠の方ですとうまく使って道具を安価で揃えられるのが魅力です。
溶接かぶり面
コチラは帽子のように完全に頭にかぶって溶接面を上下で動かすタイプの溶接面です。当然溶接中は手が自由に使え、疲れることもありません。それが何よりの大メリットですね。ただやっぱりいつ光がでるのか分かりづらい初心者の方には扱いは難しく、さらに手で遮るだけよりは若干上下にずらすのが合わない方もいます。
メリット
- 手が自由になる
- 手が疲れない
デメリット
- やはり初心者には扱いが難しい
- 人によっては上下にずらすのが合わない
どちらにもやはりメリット・デメリットがありますが、多くの方がどちらか合う方を使っていらっしゃいます。
遮光面に取り付ける遮光ガラスについて
遮光率
遮光面には遮光ガラスを取り付けて作業することでアーク光を遮光できるようになります。ただ遮光ガラスにも保護レベルがあり、4番から14番まであります。それぞれ遮光度合いが違うので、自分にあった遮光率を選びましょう。
遮光番号 | 被膜アーク溶接 |
5 | 30A以下 |
6 | 30A以下 |
7 | 35-75A |
8 | 35-75A |
9 | 75-200A |
10 | 75-200A |
11 | 75-200A |
12 | 200-400A |
13 | 200-400A |
14 | 400A以下 |
遮光ガラスの色
実は溶接屋さんにとって、アーク光が何色に見えるガラスを使うのかがとても重要。現在緑にみえるものが一般的に使われていることが多いです。全部で黄色・緑色・青色と3種類の遮光ガラスがあるのですが、黄色はとても見づらく、とても明るく見えるので目も疲れます。緑は一般的に使われているというだけあって見やすく、作業もしやすいです。次に青。こちらが最強に目に優しくて、疲れないガラスと言われています。
青色遮光ガラスの裏話
だったらどうしてみんな青ガラスを使わないのか。それは使わないというよりないんです。ある有名メーカーさんにから聞いた情報によると、青ガラスを作っていたのが中国の工場だったようですが、いろいろな配合で青ガラスを作るのが非常に難しく、ロットによっては緑に近かったり、きれいな青だったりしたそうです。まぁ簡単に言えば安定した青を作れなかったようです。
現在その時のロットが12番のものは残っているのですが、人気だった11番はほぼほぼありません。日本で作ればいいと簡単に思いますが、すごい数の枚数を予め作るという契約で制作する必要があり、また制作費なども日本で作って売るとどうしても値段が10倍くらいになってしますようです。頼みのもともと作っていた中国の工場も閉鎖したようで、どこも現在作っていないようです。
ここで理研科学研究所さんが遮光プレートと併用することで青く見えるようにさせる青色プレートを開発しました。その名もアクリルプレートKR青色。2番手強色が濃くなってしまうので溶接ガラスを予め2~3薄いプレートを使うことが必須です。
例)11番くらいにしたければ9番手の遮光プレートにこのアクリルプレートKRを併用
青色具合ですがやはり個人によって見方が変わってくるようです。ただレビューを見ると評価は高くお値段も安いので試して見る価値はあります。
液晶溶接ガラス
遮光ガラスも時代とともに、ただのガラス板ではなく液晶のものも出てきました。正直初心者からプロの方まで液晶遮光ガラスをおすすめいたします。こちらにも手持ち面に溶接ガラスをいれるようにつかる液晶溶接ガラスタイプと最初からヘルメット面についているタイプがあります。
メリット
- 手持ちの溶接面につけるタイプもありますが、基本はかぶるもので手が自由になる。
- 溶接するときに面をいちいちずらさなくても溶接を始めたら液晶が自動的に遮光するため、初心者でも扱いやすいし目を守りやすい
- 昔より安価なものも多く出ているので最近は底まで高くない
などメリットしかありません。ただ選ぶときの注意点もあります。
液晶溶接ガラスの失敗しない選び方
本体の重さとホールド感
こちらはできるだけ軽いほうがいいに決まっている。常に頭になにか載せて作業するというのは首や肩に相当の負担がかかる。軽ければ軽いほど作業はしやすく快適になるし、またホールド感こればかりは実際に被ってみないとわからないが、もしどこかでテストできるのであればホールド感が自分にあっているものがいいに決まっているのは間違いない。
遮光スピード
こちらは現在の機種ならほとんど問題ないと思いますが、1/15000から1/25000くらいがスタンダードです。遮光スピードが遅いものはアーク光が出てから遮るスピードが遅いため目に負担がかかります。ただついでに溶接後の通常モードに戻るスピード=ディレイタイムも欲を言えば早いほうがいい。
視野や明るさ
通常モードのときの明るさもある程度みたいところ、あまりに暗いと工場内でちょっと移動するときや工具を取るときによく見えない。また視野もあればあるほどいいに越したことはないので、よく見ておくポイントとなる。
遮光度と遮光色
こちらも普段自分が使っている溶接機のアーク光を遮れるかどうかを確認しておく。多くの液晶面はかなり広い遮光度をカバーしているもののよく確認すること。また色。スター電器さんでは青色ガラスの経験を踏まえ青色に見える液晶遮光ガラスを作っている。劇的に見やすくなるので、青色遮光プレートがいつか復活する日を待つのではなく、さっさと青色液晶遮光のものを使うのもおすすめ。
おすすめの液晶遮光ガラス(自動遮光溶接面)
アイボーグ180(ワンエイティ) EB-300PW
先程の失敗しない選び方を踏まえるとNo1でおすすめしたいのがSUZUKIDさんのアイボーグ180(ワンエイティ)です。ワイドな視野がありなんといっても青色遮光という優れもの!溶接業界で有名なYOUTUBERさんもおすすめしています。今の所これ以上のものはないでしょう。
寸法(幅W×高さH)(mm)
【視界/中央】195×340、【視界/両サイド】68×35~80
本体質量(g)
660
本体寸法(幅W×奥行D×高さH)(mm)
250×270×340
遮光度
【遮光前】#3、【遮光時(中央)・遮光時(両サイド)】#4~#8#8~#12(スイッチ切り替え)・#10
主な用途
TIG/MIG/MAG/MMA/切断/研磨モード:WELD(溶接)/GRIND(グラインド)
戻り速度(秒)
0.1~1.0(無段階)
感度調整
ダイヤル調整(無段階)
遮光速度(秒)
1/25000
3Mスピードグラス スタンダードビュータイプ 9100V
こちらは溶接屋さん達に人気が高く信頼も高い3Mの9100シリーズ、とりあえずこの中から選んでおけば間違いないと言われるくらいの高評価溶接面です。スタンダードビューとワイドビューがありますが、スタンダードでも視野が広めです。信頼No1なだけはある一品です。
番外編・SUZUKID プロメ PM-10CB
こちらは今なお人気が高く、多くの溶接屋さんもつかっている手持ち面につけれる自動遮光溶接液晶です。頑固にガラスを使い続けてる方も騙されたと思って使ってみて下さい。離れられなくなります。仕事がより捗るなら上と比べてコストも安いので手を出しやすいですね。
これも青色ガラスの遮光ガラスと一緒で、液晶ですが青色に見せてくれる代物です。まずは手に入らない青色ガラスよりこちらで試してみて青色と液晶の便利さを試してみるのもありだとおもいます。
まとめ
できればアイボーグ180を使ってほしいですが、実は相当な人気のため今のところは基本的に品薄です。ただ他にも青色を体感できるものをSUZUKIDさんは出しているので、プロメやアイボーグゴリラなども試してみましょう。いかに効率よく仕事できるかた重要だと思いますので、そのための資材はやはり投資だと思います。