水稲栽培 農業

田んぼの溝切りと中干しの理由と方法と溝切り機について【水稲栽培】

※この記事はプロモーションを含みます。

お米農家さんがイネを育てるにあたって一二を争うほど大変な作業と言われている田んぼの溝切り。文字の通り田んぼに溝を作る作業なのですがこれがかなりの重労働と言われています。

ただ必ずやらなくてはいけない作業かと言われると実は溝切りをやらない米農家さんもいらっしゃったり溝を切る意味がない。と言っている方もいらっしゃいます。ただ溝切りはお米を美味しく育てるにあたって必ず必要な作業という方の方が圧倒的多数となります。

今回はそんな田んぼの溝切りについて必要性や理由などを「溝切り」とはセットの作業である「中干し」と一緒に時期や方法などもお話していきたいと思います。

年間数多くの農業系資材の展示会に参加し多くの農業資材メーカーの方から貴重なお話を聞く機会の多い管理人が自身も働く資材屋での経験を活かし、またメーカーさんからの面白いお話や役に立つ小ネタをはさみながら田んぼの溝切りについて説明していきます。

本当に必要?田んぼの溝切りと中干しの意味

溝切り

そもそも溝切りにはどんな意味があるのでしょうか。簡単に言うと

田んぼの水はけをスムーズにするため

ということになります。田んぼの水はけを良くすることでどんなメリットがあるというと

  • 中干しがしやすい
  • 水不足の際に田んぼに水を行き渡らせやすい

というものが挙げられます。そのように田んぼの水管理をしやすくすることでJAさんも”溝切り一本で15kgの増収をねらえる水管理が可能”と指導しているようです。

また溝を切ることで田んぼの土の中に溜まっている硫化水素やメタンガスなどの有毒ガスを抜くことができます。それらガスは水温が上がることで田んぼの土の中の微生物が活性化して土の中の酸素を使い果たし硫化水素などを発生させます。その硫化水素は稲の根を傷ませ肥料を吸収させにくくさせてしまいます。

溝切りのメリットとして中干しがし易いと挙げましたがでは中干しをする理由はなんなんでしょうか。まず中干しについて簡単に説明すると中干しとは

田んぼの土が乾くまで干す

ことを指します。なぜそんなことをするかというと以下の目的があります。

  • 稲の根が水分を欲し地中奥深くに伸ばし根を強くする
  • 土の中のガスを抜く
  • 土自体もしっかりとさせ雑草除去や収穫の際の刈り取りがしやすくなる

つまり溝切りと中干しをしっかりと行うことで稲にとっても稲作の作業効率自体にもメリットがたくさんできてきます。ただ一つデメリットはがあるとすれば溝切りがかなりの重労働だということです。

溝切りと中干しの重要ポイント

  • 水が溝へむかうため水たまりができずらくなり、排水・中干しがスムーズに行える
  • 土中の有害ガスの硫化水素、メタンガスなど(稲の根を痛めたりイモチの発生を助長する原因)を抜くことができる
  • 干ばつの場合は、逆に溝に水を溜めることで対応策となり、水を引くのもスムーズにできる
  • 田んぼの土が強くなり、後々のコンバインの防除作業(害虫・病気対策)やひえ抜き(雑草処理)作業などが効率的にできる
  • 収穫後に乾燥した土壌からも裏作がしやすくなる

溝切りと中干しを行う時期

ここまで溝切りと中干しの重要性をお話してきましたが、いつ頃やる作業なのでしょうか。時期としては

  • 溝切り:田植え後25~30日後
  • 中干し:溝切り後すぐ

となっています。少し説明していきます。

溝切りと中干しを初める時期としては田植え後25~30日位と言われており、目標穂数の8割以上、稲の葉が7.5~8葉期あたりです。田植えが遅くなってしまった場合は本格的な梅雨前に早めに溝切り・中干しをしなくてはいけません。

中干しはそのまま2~3週間干し、田面に小さなヒビが入る程度または軽く足跡が付く程度までしっかりと干します。中干し期間が不十分だと茎数や籾の数が過剰となり根張りが弱く倒れやすく、やり過ぎると白未熟米になりやすくなりますのでしっかりと土地に合わせた期間をしましょう。

稲が大きく育ちやすい土地では早め・強めに、浅い田んぼでは2~3日の干しを繰り返し、深い田んぼでは4~5間の田干しを繰り返したりされています。

田んぼの溝切りの回り方・間隔

溝切り機での溝の切り方

次はこちらで田んぼでの溝切りのやり方を説明していきます。基本的には溝切りには溝切り機を使って行います。注意すべきポイントは

溝切りの注意ポイント

  • 田んぼに10~15cmくらいの深さまで水を残して行う(溝切りによって変わる)
  • 排水外側を1周溝を付けて溝が交差している部分をしっかりつなげる
  • 基本的には溝の間隔を2.5m~3mにし深さは10cm以上
  • 溝の末端は必ず排水口へつなげる
  • 中干し溝の形が崩れていないか定期的に点検

を気をつけながら溝を切っていきます。簡単に説明していきます。

田んぼに10~15cm程水を残した状態で溝を切っていくというのは使う溝切り機によって変わってきます。ここは必ずではないので所有している溝切り機の説明書をよく読みましょう。

溝切り機を使うと反対の台形のような形で溝ができていきますが、10~15cm位の深さができるようにしましょう。深さが足りない場合はしっかりと体重をかけ溝を切っていきます。その間隔は2.5~3m位ですが、水口や枕地など土が柔なくなりやすい場所などは間隔を狭くして切っていくのが基本です。

互い違いに切っていき外周を回って最後は必ず排水口へ溝がつながるようにしましょう。溝切りは排水をスムーズにするためにやります。それを忘れずに最後は排水口へ、溝が交差するところはしっかりと水が流れていくように溝と溝をつなげましょう

溝が崩れていることもあるので定期的に溝を点検して水の流れが滞らないようにする必要があります。

溝の切り方は農家さんによって違いますが、例としてあげると

溝切りのやりかた

こんな感じです。先に外周から切って中を互い違いに切り、最後に排水口へ抜けるというパターンも聞きます。

現在では基本的に溝切り機を使って溝を切っていくのですが、その場合交差した溝をつなげるためには溝を切り終えた後にわざわざ溝をつなげに行く必要がありました。最近はアイデア商品によってバイクのような乗用溝切り機に乗ったまま溝を繋げられるアイテムもあります。詳しく書いた記事があるので木になる方は読んでみてください。

水田の溝切り作業の溝と溝の交差部をつなげるお助けアイテム【ヨクナガレール・マルチバイドバー】

溝切りに必須?溝切り機の種類

溝を切るためには必須の溝切り機について簡単にお話していこうと思います。

水田用の溝切り機の種類は大きく分けて3種類。

  • 手押しする歩行用タイプ
  • 乗用タイプ
  • アタッチメントタイプ

歩行用タイプにも完全に力で押し切るものとエンジン補助付きものもがあります。それぞれ簡単に説明していきます。

手押し溝切り機

安くて追加で購入しやすいタイプ。ただ完全に力仕事となるため重労働は間違いなしです。

軽量で持ち運びがしやすいので、棚田のように畔を乗り越えて小面積の田んぼを行き来する場合はこれがおすすめです。

また機械ではないため、雨天時に使用しなければならない場合も便利ですね。

手押し式溝切り器
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手押し式エンジン付溝切り機

エンジンが動力となるため、力がいらなく勝手に走ってくれるので手押し機にくらべ簡単に溝が切れます。ですがこのタイプの溝切り機は押すのが楽になっても田んぼに足を取られるのが弱点でやはり重労働になってしまうという弱点があります。

手押し式溝切機 エンジン式
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乗用式溝切り機

溝切り機自体に乗ってしまうので溝切りの最大の的と言われる田んぼのぬかるみを歩くことから開放されます。また体重をかけられるため深い溝を切ることができます。

ハンドルが回らないタイプと回るタイプが有り回るタイプはさらに操縦性が上がり小回りも効くので、いままでの重労働はなんだったのかと思うほどという声も上がるほど手押しタイプと比べたときの溝切りの大変さが変わります。

乗用溝切り機
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ただ農機具店や販売店では人気のエンジンタイプ(丸山エンジンののるたんEVOなど)はすぐに売り切れてしまうため注意が必要です。

田植え機のアタッチメントタイプ

トラクターにつけて溝を切るアタッチメントとなります。トラクターに乗って作業をするため一番簡単に作業ができます。ただ田植え機に取り付けたり外したりとそちらの作業が少し面倒です。あと小回りがきかないため、細かいところは別の方法で溝を切る必要があります。

トラクター 溝切りアタッチメント
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資材屋の管理人がおすすめする溝切り機とそれぞれのメーカーの比較など溝切り機について詳しくはこちらの記事へ

田んぼ用溝切り機の種類別おすすめと比較

また新品にこだわりがないのであればメルカリに中古品があったりもします。中古品なので状態の確認などは必要ですが、嬉しいお値段で買えることもあるのでチェックしてみてもいいかもしれません。

まとめ

今回は水稲での田んぼの溝切りの意味、方法、やり方のコツ、そして溝切り機の種類とおすすめをお話いたしました。

溝切り・中干しは基本的には田植え後25~30日後から行い溝を切ってすぐに中干しを行います。中干しは田んぼの状態や特徴をみて行いましょう。

溝切りと中干しはセットで考えて行います。その2つを行うことのメリットは

  • 田んぼの水の管理がスムーズになり中干しがしやすい
  • 有毒ガスが放出され稲の生長が阻害されない
  • 根が強くなり倒れにくい稲になりやすい
  • 土もしっかりとして収穫や雑草抜きが簡単に

というものになります。

溝は田んぼの外周と中を切っていきますがその溝は2.5~3m程の間隔です。ただ土が柔らかい部分は間隔をもう少し狭くしましょう。溝の最後は必ず排水口へつなげ溝と溝が交差する場所も必ずスムーズに水が流れるように溝をつなげましょう。ヨクナガレールというアイテムで簡単に繋げられます。

溝切りは基本的に溝切り機を使って溝を切っていきます。おすすめの溝切り機と比較はこちらでお話します。

また乗用の溝切り機を使っているときにでる困ったを一発解消してくれるアイデア農機具のご紹介はこちらへ!なんで今までなかったんだろう?

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