以前きのこ栽培について栽培方法の違いや種類などをお話しました。簡単に育てることができるきのこである腐生菌のきのこはシイタケ・なめこ・舞茸・きくらげ・マッシュルーム・えのき・しめじ・ひらたけなどがありました。
⇒きのこ栽培方法と種類の基礎知識!失敗しない選び方と儲かるといわれている理由を解説
今回はその中で初心者にも人気の高いしいたけの栽培について詳しくお話いたします。基本的にはどのきのこも栽培方法が同じであれば流れも一緒なのですが、細かく違う部分もあります。
年間数多くの農業資材メーカーさんとお話する機会のおおい管理人が会話の中で聞いた情報や噂話などを自身が働く資材屋での人気などを踏まえてお話します。しいたけ栽培についてこれを読めばバッチリです。
まずは「シイタケ」について知ろう
シイタケは別の記事でもお話したように腐生菌という木材などを分解し栄養にするきのこです。おもにシイの木に生えていたことからシイタケと名付けられたという話もあり、シイ、ナラ、クヌギなどのブナ科の原木をこのむ菌です。
誰でも知っている食用キノコですが、生で食べるとしいたけ皮膚炎というアレルギーがでることもあり生では食べられません。きのこは菌ですので食中毒の危険性もあります。食べるときはしっかりと調理して食べましょう。生のシイタケは危険です。
どちらの栽培方法にする?シイタケ栽培の種類
シイタケの栽培方法は大きく分けると
- 原木栽培
- 菌床栽培
の2つがあります。原木栽培はその名の通り木にシイタケの菌を植えて栽培する方法である程度の準備やスペースが必要となります。きのこの栽培といえばこの原木栽培をイメージする方が多いと思います。
菌床栽培は菌が植えてある培地(オガクズなどでできている)を買ってそれを育てるというもので、栽培キットなどで初心者が自宅の小規模な栽培から大量に施設で育てるプロの方までが扱う栽培方法です。
原木栽培と菌床栽培の違い
2つの栽培方法がありますが、それぞれの違いとは何でしょうか。
原木栽培は自然栽培とも言われ、山などにホダ場と言われるスペースを作りそこにほだ木と言われる原木に植菌をして自然の中で育て養分を与えることもないため天然状態のシイタケが出来上がります。ただほだ木がら作るとほだ木だけでも2年がかかり、すぐに収穫ができるというわけではありません。基本的に春・秋の2回収穫ができます。
対して菌床栽培は人口栽培と言われ、菌が植えられた塊を室内で管理をしながら育てていく栽培方法です。足りなそうであれば養分をあげることもできるので、3-6ヶ月でシイタケが発生し年中収穫ができてしまう画期的な栽培方法です。スーパーなどで見るものはほとんどが菌床栽培のものでしょう。
となると気になってくるのが味の違い。普段スーパーなどで売っている菌床栽培のものはクセがなくどんな料理にも合う子供から大人までもが安定的に食べやすいものとなります。たいして原木栽培のものは原木ならではの風味がありシイタケというものを強く感じることができます。原木栽培のものはスーパーなどでは基本的には干しシイタケとなっていることが多いでしょう。
生の原木栽培のものは直売所でおいてあることがあり、とても人気で年末年始などは供給が間に合わないほど売れるため副業や事業としているかたは原木栽培をしている方も多いと聞きます。
シイタケの菌床栽培と栽培キット
初心者の方はまずは栽培キットから初めるのがいいでしょう。原木栽培でも栽培キットはありますがスペースがある程度必要なので栽培キットがお手軽に初められます。
栽培キットは菌と栄養が培地に含まれているため1回の発生で栄養を使いすぎなければ2~3回位は収穫できます。栄養を追加すれば無限にできるのかという考えもあり挑戦している人は多々いますが、こうやれば確実といった無限収穫法はまだ確率されていないようです。
栽培キットの基本的な流れとコツ
栽培キットでシイタケを育てる場合の注意点は
- 温度
- 場所
です。時期は温度と湿度、場所を気をつければ年中可能です。説明していきます。
まずは室温が18~25℃で50%以上を守ることが大事です。また乾燥してても菌がうまく機能しないので湿度もある程度必要となります。栽培キットが異様に軽かったら乾燥して水分が足りていない可能性大です。
栽培キットを置く場所はキッチンや玄関など直接日光が当たらない湿度が高い場所にしましょう。基本的に栽培キットにはそれ用の栽培袋や栽培容器があるので湿度などはある程度は保てるようになっています。栽培の流れは
- 袋を開ける
- 軽く菌床を洗う
- 水やりをしながら栽培
- 発生
- 間引き
- 収穫
と言った流れになります。
最初の袋を開けるですが、物によって袋を開けないまま発生を待つものもあるので説明書をよく読みましょう。なぜ袋を開けるところから流れに入れたかというと袋を開ける刺激できのこの発生が促されるというものだからです。他にも原木の場合ですが、雷の落ちる音できのこの発生が促され大量に収穫ができるという報告もあるようです。
白いカビのようなものはシイタケの胞子ですが、青いカビは青カビなのでもし発生したらブラシなどで丁寧に落としましょう。
間引きや収穫は手ではなく鋏で行うようにしましょう。最初の発生は1週間から10日ほどで起こります。その後傘が丸い状態で裏のヒダの膜が切れ始めたら収穫しましょう。手で取ると菌床を傷つけ2回前以降の発生が無くなる可能性もあります。
収穫後はある程度(15日ほど)菌床を休ませてから丸一日苗床全体を浸水させてから2回めの収穫に備えます。そのうちまた芽が発生します。1回目が大量に発生した場合は栄養が足りなく発生が少なくなる可能性があるので間引きなどはちゃんとしましょう。うまく栽培すると3回目も発生可能です。
原木栽培の流れとコツ
原木栽培は菌床栽培と違い外で栽培することが前提のため収穫できる時期があります。収穫時期は春と秋で場所にもよりますが11月と3~4月が収穫最盛期となります。
またホダ木を作るのに2年ほどかかります。このホダ木作りが重要で良いものができると5~6年は収穫可能です。つまりホダ木がキーとなってくるため
原木栽培のポイント
- ホダ木の原木選び
- 原木の伐採時期
- 仮伏せ・本伏せ場所や組み方
などが重要なポイントとなってきます。基本的な原木栽培の流れは
- 原木伐採
- 玉切り
- 植菌
- 仮伏せ
- 本伏せ
- 発生
- 収穫
という流れとなります。一つずつ説明していきます。
原木伐採
シイタケの原木としてまず選ばれやすく最適なのはクヌギやコナラですが他にも適しているものでアベマキ・カシ・カシワ・シイ・シデ・ショウベンノキ・タブノキ・ヌルデ・ブナ・ミズナラ・ミズメなどが挙げられます。
伐採時期はクヌギ・コナラは栄養が豊富な紅葉期。その他落葉広葉樹は紅葉から新芽が出る春、常緑広葉樹は1~2月頃に伐採しましょう。特に樹齢10~15年の若いクヌギが最高のホダ木候補で、その次がコナラとなりそれ以外の木はホダ木としての寿命が落ちると言われています。
伐採後は20~30日程度そのまま干しましょう。これを葉枯らしといい、良いクヌギは干した後も枯れた状態で葉がついたままだと言われています。
玉切り
伐採した原木を90~120cmくらいの長さで切断していく作業です。枝を切り落とし(枝打ち)ますがこの時枝の角度に対して直角に切ると切り口が小さく切れます。
玉切り後は日光の当たらないところで乾燥させていきます。日光が当たりそうな場所では遮光シートなどを被せましょう。井桁上に組んでおくと管理をしやすいです。
植菌
植菌には必要なものが幾つかあります。必須でないものもありますが
- 種菌
- きのこ穴あけドリルビット
- インパクトドライバー
- 植菌用ポンチ
- 封蝋
などになります。
シイタケの菌を選んで植菌をしていくのですが、意外に調べるとシイタケの菌も種類があります。またきのこの栽培の記事でも説明してきましたが菌の埋め込む形も3種類あります。また発生する時期もある程度考えてそれにあったシイタケの菌を選びましょう。
まずは発生する時期ですが、低温菌・低中温菌・中低温菌・中温菌・中高温菌・高温菌にわかれます。低からはじまるものは春に発生、高からはじまるものは秋発生となりますが、発生時期は大抵書いてありますのでよく見ましょう。
菌形状ですが、種駒・形成駒・オガ菌の3つに分かれます。種駒や形成駒はドリルやポンチで穴を開けてそのまま穴に埋め込みます。オガ菌は穴を開け埋め込みロウなどで蓋をする必要があります。種駒は発生に時間が一番かかり、オガ菌は発生が一番早い。形成駒は手間が少ないというのがそれぞれの売りとなります。
菌を埋め込む個数は原木の直径の4倍以上の個数となります。直径10cmだと40個以上となります。原木の木口から5cmから15cm間隔で埋め込んでいきます。1列終わったら4cmの間隔を開け次の列を作って埋め込んでいきましょう。
穴は大体8~12mmのきのこ用のドリルビットが売っています。駒に合わせたビットやポンチを使い深さは25mmくらい開けます。駒菌の場合は穴がちょうど塞がるくらい押し込み、オガ菌は埋め込んだあとに封をします。
植菌の時期はヨシノサクラが咲く頃までの2~3月くらいまでにやってしまいましょう。
仮伏せ
植菌を終えたら仮伏せを本伏せと合わせて約2年ほどする必要があります。まずは仮伏せから説明をするときちんとした場所選びがポイントとなります。
- 東・南向き
- 風通しのいい日陰
- 雨が当たるが排水がいい
を選びましょう。原木は棒積みにして高くても50cmくらいまでしか高さを出さないでください。小室やシートなど被せて週に一度は表面が濡れるくらい散水しましょう。大体2ヶ月ほどこの仮伏せを続けます。
本伏せ
梅雨前に本伏せに移行しきのこの菌の活着を促し発生を待ちます。本伏せは原木の組み方がポイントとなってきます。よろい伏せやムカデ伏せ、鳥居積みなど基本的には風通しが良くなるように組みましょう。
また雨がふらなかったり30℃以上の日には散水をおこなったり、3ヶ月毎に原木の上下をひっくり返すなどの管理をしましょう。
発生・収穫
本伏せで2夏越しその秋から発生します。ただ2年経ったホダ木をシイタケが発生しやすい場所、つまり湿度が高く温かいところに移動させ(ホダ降ろし)る刺激でシイタケが発生しやすくなるとも言われています。
昔から雷が落ちるときのこが生えると言われているように、きのこの発生には外部要因の刺激が必要なようです。それについて雷の音を聞かせたりナイロンコードの刈払機で原木を叩くなどいろいろな方法が科学的な根拠はないですが試されています。もし発生が悪い場合は試してみるのもありかと思います。
まとめ
さて今回はシイタケの栽培方法とコツについてお話しました。
シイタケの栽培方法は菌床栽培と原木栽培があります。初心者は栽培キットを使って育てる菌床栽培を試してみましょう。誰でも簡単にシイタケを収穫できますが2~3回収穫すると菌床は使えなくなってしまします。
原木栽培は木を切るところから始まります。紅葉がはじまる時期にクヌギやコナラの木を切り原木作りをして菌を植え付けて収穫まで2年かかります。ですが5~6年は収穫できます。
最後に人気のあるシイタケの種菌にはこんなラインナップをご紹介。
すその360
大自然から生まれた春秋系品種です。傘の巻き込みが強く大葉、肉厚な低中温菌です。発生が早く春と秋の比率は6:4です。
キンコーM10
厚肉の大葉で乾燥や生食に向いている。春秋用
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