長芋や自然薯を栽培している方でクレバーパイプの名前を知らない方はいないと思います。政田自然農園さんが自然薯を栽培できるように1974年に開発した画期的な栽培器です。
もともと自然薯は山に自生するもので栽培するのは不可能とされていましたが、簡単に言うと周りの土と自然薯まわりの土を分けることで栽培することが可能だとわかり作られたのがクレバーパイプです。
その形から長芋やゴボウの栽培にも使えるクレバーパイプですが、実はいくつか種類があってそれぞれ用途が違います。
今回はそんなクレバーパイプについてお話していきたいと思います。年間数多くの農業資材の展示会に赴きたくさんの資材メーカーさんとお話する機会の多い管理人が聞いた話や自身が働く資材屋でのお話を踏まえてお伝えします。
クレバーパイプとは
クレバーパイプは自然薯や山芋・長芋を育てるために開発された政田自然農園さんの商品となります。ここで少し詳しくクレバーパイプの詳細や種類を知っておきましょう。
クレバーパイプを使う理由【メリット・デメリット】
クレバーパイプは上でも少しお話させていただきましたが、使うことで次のメリットがあります。
ポイント
- 自然薯まわりを自然薯の好む土環境にする
- パイプ内で栽培するため形が整いやすく傷つきにくい
- 簡単に収穫ができる
自然薯はもともと自然環境でしか育てられないと言われていた野菜で、それを栽培できるようするには自然薯の育つ環境を用意することが一番の近道です。ただパイプ内で育てることでパイプの形が自然薯に影響してしまうというのがデメリットとなってしまいます。
クレバーパイプの種類
政田自然農園さんのクレバーパイプにはいくつか種類があります。
- クレバーパイプ長芋用
- クレバーパイプ自然薯用
- クレバーシート
の3種類です。それぞれについてお話していきますが、まず長芋用と自然薯用の違いはクレバーパイプの長さと留め具となるツメがついているかいないかです。
クレバーパイプ長芋用
長さが105cmで山芋や長芋、ゴボウの栽培に使っている方が多いです。長芋用のクレバーパイプには留め具であるツメが1本に対して2個付いています。
クレバーパイプのツメは後々使い方で説明しますがクレバーパイプ内に6~7割程度しか土を入れないため、パイプが外側の土の圧力で変形して長芋の生育に影響が出ないためしっかりと形を留めるためにツメを使います。ですがツメで留めないで栽培している方もいらっしゃいます。
クレバーパイプ自然薯用
見た目は全く同じな長芋用と自然薯用ですが、こちらの自然薯用は135cmあります。山で自生している自然薯は環境の変化を嫌い、環境が変わると腐ってしまったり変形してしまいます。
その特徴から自然薯まわりの土の環境を畑の環境から守るために筒型のクレバーパイプが開発されました。それでも畑の肥料や土壌菌が入り込んだり、水はけによってうまく栽培できないこともあります。
クレバーシート
こちらは長さが140cmですが、パイプ状ではなくシート状になっているため重労働であるパイプ内への土入れ作業と収穫作業が楽になった新形状のものです。
自然薯をうまく生育できるとクレバーパイプの135cmでは足りなくなる場合があり、そのため長さを伸ばした140cmになりました。またクレバーパイプのデメリットである芋にパイプの形が影響を与えてしまうという現象を解消するため底面がV字型になっています。
使用方法はクレバーパイプと違い事前にパイプ内に土を詰めるのではなく、畑にシートを設置した跡に自然薯が好む肥料などが含まれていない土を敷き詰めます。そこは間違えないようにしましょう。
クレバーシートゴボウ用もあるようですが、今は政田自然農園さんのHPにはなくなっていますのでこのクレバーシートを使う方もいらっしゃいます。
クレバーパイプの使い方
クレバーパイプの使い方は長芋用と自然薯用でほとんど一緒です。
用意するもの
まず必要なものですが、
- クレバーパイプ
- 案内棒
- 肥料
- パイプ内用土
- 種芋
- 支柱
- きゅうりネット
- マルチ
となっています。
案内棒とはクレバーパイプを埋めた際にパイプのスコップ状になっている側の中央に立てどれくらいの深さ覆土したのか確認できるようにするための棒です。30cmほどの竹などでも代用できます。
肥料はできるだけ専用の肥料を使ったほうが安心です。またパイプ内に入れる土ですが赤土や真砂土など肥料や有機物が入っていないものを選びましょう。理由は上でも述べたように肥料の影響で生育障害になるからです。
きゅうりネットは地上に目が出てきて巻き付くためのものでマルチは自然薯栽培のみで雨水の侵入を防ぎ加湿を防ぐために使います。自然薯は環境の変化に弱いのでしっかりと対策をしましょう。
クレバーパイプを使った栽培の流れ
自然薯は4月上旬~5月上旬頃に長芋は3月中旬~4月下旬に植え付けを行います。収穫は自然薯は12~2月、長芋は11~2月となります。
簡単な流れを説明すると
- クレバーパイプに土入れ
- パイプを埋める溝を掘る
- パイプをセットし案内棒を立て土をかける
- 案内棒に合わせて種芋を埋める
- 肥料
- 芽が出てきたら支柱とネットを張る
- 収穫
という流れになります。それぞれ注意点を踏まえて説明します。
パイプへの土入れはパイプの下を手で抑えスコップのように土を入れたりして入れ込んでいきます。このとき長芋はパイプの6~7割くらいしか土を入れません。土は肥料や有機物を含まないものにし長芋用は留め具ツメでしっかりと留めます。
深さ30~40cm、幅25cmの溝を堀りパイプを10~15度くらいの角度がつくように埋めます。その時スコップ状の真ん中に案内棒を垂直に立てます。その案内棒が30cm感覚になるようにクレバーパイプを並べていきましょう。案内棒が20cmほど埋まる程度に覆土します。
時期としてはサクラが万回した10日後くらいを目安に種芋を案内棒から5cmほどほり水平に植えます。種芋の発芽点を案内棒に正確に合わすのがコツです。その後5cm程度土をかぶせましょう。
肥料など畝の頂上より10cm程度話して左右に均等に撒いて軽く耕しておきます。芽が出てきたら支柱とネットを張りツルを這わせましょう。地面にツルを這わせると病害の元となります。自然薯は定植後30~40日後に雨が降った後に白黒マルチをしっかりと敷いて固定しましょう。
温度や水分量が急激に変化するとひび割れや分岐芋ができやすくなります。ツルや葉っぱが黄ばみだした頃にムカゴと呼ばれる実ができます。ムカゴはそのまま茹でたりして食べることもでき、更には育てることで種芋にもなります。
ツルが完全に枯れた後10日以上過ぎた頃にパイプを土から取り出して収穫できます。わかりやすい動画がありましたのでご紹介します。
まとめ
もともと自然環境でしか育てることができなかった自然薯を栽培できるようにした画期的なクレバーパイプ。自然薯や長芋、山芋、ゴボウなどの栽培におすすめで実際にとても人気の商品です。
中にはクレバーパイプの代わりを自作して使っている農家さんもいらっしゃいます。波板をクレバーシートの代わりに使ったり、ペットボトルをつなげてクレバーパイプの代わりにしたりと様々な自作クレバーパイプもあります。
ただ数本の自然薯などだったらともかく大量に作る場合はクレバーパイプなどを揃えたほうがかんたんだと思います。