秋の味覚の代表格である柿。大好きな人は多いと思います。柿には大きく分けると甘柿と渋柿という種類があって甘柿はそのまま食べることもできますが、渋柿はそのまま食べることができません。
なぜかというと実は渋柿にはタンニンと言われるポリフェノールの一種で苦味・渋みの成分が含まれていて、そのまま口に入れてしまうと渋みが口いっぱいに広がりとても食べれたものではありません。理由はその渋み成分タンニンが可溶性で口の中に溶け出してしまうから。
ただそれを食べれるようにしたのが柿をドライフルーツにした干し柿です。柿を干して乾燥させることで可溶性であるタンニンが不溶性に変化して食べても渋みを感じなくなります。他にもタンニンが溶けなくする渋抜きという方法は存在しますが今回は昔から柿の皮を向いて干す事によってタンニンを克服してきた干し柿についてお話します。
ちなみにいちいち渋柿を渋抜きをしなくても甘柿を食べればいいのでは?と思いますが、実は渋柿のほうが糖度は高く干すことでより凝縮し甘く美味しく感じます。
今回は農業資材を多く扱う資材屋で働く管理人が、農業資材メーカーさんから聞いたお話や勉強したお話をまとめて記録としてご紹介します!今回は渋柿を魔法のように甘く美味しくする干し柿の作り方です!
干し柿の基本的な作り方の流れ
干し柿をつくる大きな流れを以下のようになります。
- 渋柿の購入
- 柿をよく洗う
- 柿のガクを取る
- 皮を剥く
- 柿に紐をくくりつける
- 熱湯に浸す
- 干す
- 揉む
- 枝を切る
- 保存
という流れになります。後ほど詳しく見ていきますがまずは干すことのメリットをまとめました。
干すことでの栄養価の変化
柿は干すことで1/3~1/4くらいに縮んでしまいます。もともと柿はビタミンCが豊富だと言われていますが、干すことでどんな変化があるのでしょうか。簡単に言うと
- ビタミンCはかなり減少
- ビタミンAが増加
- 食物繊維がかなり増加
- 必須脂肪酸増加
となります。干すことでビタミンCはほぼなくなってしまいますがビタミンAが増加し食物繊維はかなり多くなり、またコレステロールを下げたり血液をサラサラにする必須脂肪酸が増えます。また二日酔いにいいと言われ、アンチエイジングにも効果があるとされている渋みのもとタンニンと言われるポリフェノールも渋みを感じつ摂取できます。
ただどんな食べ物もそうですが、食べ過ぎは太ります。渋柿は干すことでカロリーはあがるため食べすぎにはご注意。またタンニンは便秘になる要素のひとつなので量を取りすぎると便秘になりやすくなります。
それでは美味しい干し柿の干し方を見ていきましょう。
失敗しない作り方干し柿ができるまで
今回は農家さんの行っている方法などもご紹介しながらご家庭でも簡単に干し柿をつくる方法を要点をお話しながら見ていきます。
干し柿をつくるベストタイミングな時期とは
干し柿をつくるにあたって敵はカビです。ですので干し柿をつくる時期は雨があまり降らずカビが発生しにくい乾燥した時期がおすすめです。つまり11月中旬から12月以降だと言われています。
大体干す期間は天気が良くて2~3週間ほどですので、できるだけ雨がふらなそうな時を選んで作り始めましょう。
渋柿を購入
まずは干し柿をつくるのに必須の柿を買いましょう。干すことによって柿自体が縮むとはいえ干しやすいように小型の渋柿を干し柿にするのが一般的です。
有名な品種では干し柿専用の柿である尾谷柿・平核無・市田柿・夢西条などたくさんの種類があります。スーパーなどでも変えますが、インターネットで様々な種類を買ってそれぞれの干し柿を作ってお気に入りを探すのもいいと思います。
柿を洗う
こちらは基本中の基本ですね。後々消毒もしますが作業前に汚れなどを落とすためにも柿をよく洗いましょう。
柿のガクを取る
柿のヘタについている葉のようなガクと言われる部分をハサミで切っていきます。
皮を剥く
次は柿の皮を向いていきます。
方法としてはピーラーを使う場合柿の先端からヘタに向かって縦に向いていくと皮を向きやすいようです。包丁を使うメリットはほぼありませんが包丁などの場合はりんごのように剥く方法をとる方もいます。
正直数が多い場合は一つ一つ剥くのは手間なので、全自動皮むき機をプロの方は使っています。JAに出荷する場合は品質などを一定にするために全自動皮むき機を使わなくてはいけないというルールもあるそうです。
プロの方でなくでもインパクトドリルに柿をつけてピーラーを当てて皮を剥く柿の皮むき器もアイデア商品として存在しよく使われています。こちらはハンドルを回す手動式もありこれがあるのとないのとでは全然作業効率が違います。
皮が少しでも残ると見た目や食感が悪くなるので、しっかりと皮を削ぎ落としましょう。ただ皮もとっておいて一緒に干して細かく砕くことで調味料として使えます。
紐をくくりつける
次にビニールの紐に柿をくくりつけていきます。柿のヘタについている枝はT字になっており紐が結びやすくなっています。大体10cm感覚で柿を結びつけていきましょう。紐の長さは干す場所にもよります。
ただここでヘタが折れてしまったり、枝がT字でなかったりすると言うこともあります。こういった場合は柿を紐にくくりつけるための柿に挿してくくりつけやすくするクランプがあります。いくつか種類がありますがとっても便利です。
また柿をくくりつけていく紐にも干し柿用があったり、そもそも紐ではなく干し柿用ハンガーもあり干し柿専用商品はかなり充実しています。少しでも作業が楽なようになっているので気になった方は使ってみましょう。
柿クリップのMAやAなど名前・種類の違い
柿のクリップにはいくつか種類があります。もちろん作っているメーカーに寄って呼び方が違いますが、大きく分けると以下の種類があります。
- MA型やA型
- T型
- MB型やB型
- MC型
作っているのが大五郎というメーカーとミネというメーカーになります。正直2つのメーカーに優劣はありません。大五郎のA型におそらくミネのMをつけたMA型はほぼ同じものです。では簡単に説明していきます。
MA型・A型クリップ
A型やMA型のものはヘタの枝がなくてもクリップのように柿に針金を差し込むようにして柿を吊るせるようになります。2個吊りや横吊りができます。また枝を付けないで収穫する平核無柿には必須アイテムです。
T型クリップ
こちらがT型ですが正直使われているのを見たことが殆どありません。地域よって使われたり使われなかったりというのもあるらしいです。
B型・MB型クリップ
こちらはMB型は上の写真のようにU字型になっておりB型は1本のI字になっています。それぞれのクリップの穴の部分に枝を挟み込みかきを吊るします。
MC型クリップ
こちらはMC型でV字の部分に枝を挟み込み柿を固定します。あとはこのクリップを紐に結びますが、紐の両端で2個吊りで使われることが多いクリップです。
他にも同じようなものがいくつかありますが、大まかな使い方は一緒です。
熱湯に浸す
プロの方は硫黄燻蒸をして雑菌の繁殖や酸化による変色を防ぎますが、家庭でそんなものは用意できないので、紐でくくりつけた柿を沸騰したお湯に10秒ほど浸して熱湯消毒していきます。そうすることで柿がカビにくくなります。
さらに人によっては焼酎をスプレーボトルなどに入れ、干してから柿の水分がなくなる状態になるまで毎日吹きかけて消毒をする方もいます。
柿を干す
上でも書いたとおり干し柿を作る上でカビは一番の敵です。カビの発生を防ぐには前の段階でお話した消毒や空気の乾燥などがとても重要です。そのため日が当たらなくてもいいので風通しのいい場所に干しましょう。扇風機などを使うのも効果的です。
大体2週間以上干し、更にお好みで1~1ヶ月半干してもいいでしょう。
ちなみに干して黒く固くなっていく干し柿に対して、硫黄で燻製してから乾燥させるあんぽ柿というものもあります。干し柿が水分量が20~30%にたいしてあんぽ柿は50%ほどあり、干し柿に比べてジューシーな食感となります。
柿を揉む
1週間位たって水分が抜けたらやさしく柿を揉みましょう。それをできる限り毎日続けることに寄って渋みが消えやすくなり甘みが増します。
柿を干していると白い粉のようなものが表面についていることがありますが、これは柿の糖分が結晶化したものなので問題はありません。
枝を切る
しっかりと水分が抜いて干し柿が完成したら、紐をくくりつけた枝部分を切り落としましょう。そのまますぐに食べられますが、ラップやジプロックなどに入れて冷凍庫で熟成させるとさらに甘みが増します。
これで美味しい干し柿の完成です。
まとめ
古くは平安時代の文献でも確認できた干し柿は、冬における保存食でありました。また意外にも日本だけではなく中国やベトナムでも作られています。渋柿をなんとか食べようと試行錯誤した先人の方はすごいとおもいます。
ここで重要点をまとめました。
- 干し柿をつくるのは12月頃
- 風通しのいいところに干す
- 柿と紐とピーラーとハサミがあれば作れる
- 干すのは2~3週間
渋抜きは柿を干す以外にもアルコールを使ったり現在では渋抜きをする専用の商品もあったりして干さなくても渋柿を食べることができます。ただ干し柿にする以外にも柿の渋抜きをする方法はいくつかあります。それらの方法が気になった方はこちらの記事もご覧ください。