秋に入ってくると米農家さんはついに収穫の時期になってきます。ただお米を収穫したあとも実はお米農家さんの戦いは終わっていません。一年汗水を垂らして作ったお米の等級の格付けをされるからです。お米の等級を検査するのには農作物検査員の資格が必要となります。
では一体お米の検査はどういったことが行われているのでしょうか。正直等級とお米の美味しさは関係ないという意見もありますが、買う側からしたらやっぱり等級が高い方が美味しいと思いますよね。では実際にお米の等級はどんな検査をしてどの様につけられるのでしょうか。
今回はお米の等級検査、つまり米穀検査のついて検査の大まかな流れをお話しようかと思います。知っている方も多いかと思いますが、あまり詳しくは知らない方は興味がある方も多いハズ。年間多くの農業資材のメーカーさんとお話する機会の多い管理人がお米の等級検査についてよく使われている検査用のアイテムとともにお話いたします。
お米の等級を決める等級検査について
お米の等級検査は国の公的機関が法律で決められた基準に基づいてお米の等級を決めていきます。お米の等級は
- 1等級
- 2等級
- 3等級
- 規格外
の4つに格付けをされ1等級が一番等級が高いということになります。その等級を決める要素って何?というと
- お米の粒の揃い具合
- 水分量
- 駄目なお米の比率(被害米・死米・着色粒・異種穀物粒・異物混入)
の3つで決められます。ちなみに1等級から規格外までの等級基準はこうなっています。つまりこれがお米の等級の違いということになります。
等級/要素 | 整粒割合 | 水分含有量 | 着色粒割合 | 駄目なお米・異物率 |
1等級 | 70%以上 | 15%以下 | 0.1%以下 | 15%以下 |
2等級 | 60%以上 | 15%以下 | 0.3%以下 | 20%以下 |
3等級 | 45%以上 | 15%以下 | 0.7%以下 | 30%以下 |
規格外 | なし | なし | なし | 50%以下 |
でもそんな等級ですが実は表示義務はなく書かなくても問題はないのでお米の袋にも書かれていない場合が多いです。
そして実は等級検査自体も任意となっていて絶対に行わなければ行けないものではありません。ただ基本的にはするのが当たり前と言われているようで日本全てのお米の6割が受けているというデータもあります。ある農家さんは等級検査を受けないと「〇〇米」というように名乗れないので受けているとも言っていました。
等級検査ができるスマホアプリ「らいす」
実はスマホのアプリでも等級検査ができてしまいます。等級の目安を知ることができるので持ち帰り・再選別・再検査の手間がかかりません。また値段の高い穀粒判別機能のある計測器を買わずにすみます。
等級検査と食味検査の違い
ちなみに新潟県の魚沼産コシヒカリなどでよく聞く「特A」というのは等級検査とは全く関係なく、評価員たちが実際にご飯にして食べて行う「食味検査」での評価となります。
等級検査と食味検査は同じようなお米の評価ですが簡単に違いを説明すると
- 等級検査は見た目を重視した評価
- 食味検査は評価員による味の評価
となります。そんな食味検査はどのようなランクがあって何が見られているのでしょうか。
食味検査はお米の
- 外観
- 香り
- 味
- 粘り
- 硬さ
- 総合評価
の6つの要素で決められています。そしてランクは
- 特A
- A
- A’
- B
- B’
の5段階となります。正直実際にお米を食べる側としては見た目より美味しさのほうが重要です。ただ法律として定められているのは等級検査ということになっているので実は農薬をかなり使って見た目を良くすることに全ブリをして等級検査の基準の見直しを求める声も上がっています。
ちなみに食味検査は農業資材メーカーでも有名な「サタケ」さんなど様々な場所で行っており、お金を払えば検査をしてもらえます。
玄米の等級検査の流れ
さてお米の等級検査は実際どういった流れで行われているのでしょうか。簡単に流れを説明すると
- 重さを量る
- 検査米を採取
- 色・粒揃い検査
- 水分検査
- 精米して品質・粒割れ検査
という流れになります。それぞれ説明していきます。
お米の重量検査
等級検査を受けるお米はまず袋ごとに重さを測ります。例えば30kg袋の場合は袋自体の重さをいれて30.5kgなければいけません。ちなみに中身のお米とお米を入れている袋の重量をあわせて「皆かけ重量」と言われます。
重さは少なくても重すぎてもこのあとの検査を受けられません。ですので検査を受けるためにしっかりと重量を測ることが重要となります。
検査米を採取
次に検査をする米を袋ごとから採取します。ただ袋を開けて丁寧にお米を採取するなんてことは基本的にはしません。太い針のようなもの、米刺しとか穀刺しという棒状の器具を使って米袋を刺して米を採取します。
6段満載の42袋の場合15袋からサンプル採取して検査します。
米刺しは一回刺して決まった量のお米を採取できるようになっています。1袋に2箇所穴を開けて採取し、採取したあとは穴をシールで閉じます。ストレス解消になるというお話や意外に力仕事で疲れるというお話もあります。
目視でお米の色や粒揃いをチェック
採取したお米をカルトンと呼ばれるお米を検査する専用の検査用皿にいれて目で見てチェックします。チェックする要素は
- 整粒と被害粒の割合
- 着米粒の割合
- 異物の混入
などの目で判定できるものです。被害粒は背白、腹白、乳心白 、基部未熟、割れ、青未熟、その他充実が悪く細い米などが当てはまります。着色粒はむれ米や虫の食害による斑点がついた粒となります。着色の等級基準は上でも上げたように厳しいため玄米色彩選別機などが有効といわれてますが、1粒1粒ピンセットで米粒を見るという方法をとっているところもあるようです。
これらの割合によって等級が決まってきます。これはカルトンの種類や色によって判定しやすいものがあります。例えば
- 黒:皿が黒いため白いお米の形やヒビが見やすく整粒、胴割れが探しやすい
- 白:皿が白いため虫食いの黒い斑点や異物、未熟米が見やすい
- 鏡付き:一部や全面が鏡のものがありますがお米の反対側まで見れる
- 百粒:お皿にお米がハマる穴がくり抜いてあり百粒選別ができる
お米量の水分量の検査
こちらはお米専用の水分計でお米の水分量を測ります。
基本的には玄米状態で14.5~16%、精米したお米だと14.0~15.5%が適正な水分量とされています。コレより少ないと乾燥米となりひび割れを起こしやすくなり味が悪くなります。また多いと美味しいのですが、保管中にカビも生えやすくなり保管が大変です。
ですが水分量が多い場合は再度乾燥するか、そのまま規格外の等級とするか生産者が選択できます。
小型精米機にかけて検査
検査用の小型精米機で精米してお米の品質や胴割れを検査します。
以上の過程を終えてお米の等級が決まっていきます。
令和4年から変わる?お米検査規格の変更
実はここまでお米の等級検査についてお話してきましたが、令和4年から一部農産物検査規格が変更されるとのことです。上でも少し触れましたが現在の等級検査について様々な意見や時代の流れなどもあり専門家が話し合いいくつか変更点が出てきたとのことです。
その中でも一番の重要ポイントが今までほぼほぼ目視で行われてきたお米の等級検査ですが、機械鑑定前提での検査となります。その9つの規格は
- 容積重
- 水分
- 白未熟粒
- 死米
- 着色粒
- 胴割粒
- 砕粒
- 異種穀粒
- 異物
となります。これらが今では上で上げた基準で測られてきましたが、これから国が決める基準に変更され機械判定で証明する必要が出てきます。それらを証明書だけでなくIDやQRコードなどを読み取ることでスマホでも証明事項を表示できるようになるとのことです。
他にも細かく色々変わるようで随時実施されていきます。
まとめ
等級検査は正確には農産物検査といって単に等級をつけるだけではなく、米袋に書いてある産地や銘柄などを証明するための検査でやらないと少し説明したように「〇〇産〇〇米」として販売できないためやらなくても良いものの、お米を売るためにはほぼ必要な検査となっています。
令和4年に証明書や表示の仕方が細かく変わってきますが、より細かくなりわかりやすくなってきます。また目視から機械判定での検査が必要となってきます。目視での検査は人間が行うためミスもありますが機会になってくるとより正確に厳格に検査されます。
これから細かく基準の改正がはじまってくるので、情報をできるだけキャッチして置いていかれないように気をつけましょう。