農業のお仕事をしている方にとって夏はかなり悩みが多い時期になります。5月くらいから太陽の光も強くなり、気温もどんどん上昇していきます。農作物にとって水不足や強い太陽光、そして真夏日の温度は良くないですよね。
そんな中今回はビニールハウスの遮光、遮熱剤の違いについてお話させていただきます。前回、タイベックの内張りカーテンと外張りカーテンでの遮光ももちろんできますが、今回はビニールハウスの温度を調節できる遮光・遮熱塗料について。
ビニールハウスの内張りカーテンでの遮光はこちら↓
様々な農業メーカーさんや代理店の営業さんとお話する機会の多い管理人が、展示会や営業さんなどから得た情報と実際に売筋やおすすめのアイテムをご紹介します。これを読めばビニールハウスに使える遮熱塗料と遮光塗料の違いとそれぞれのおすすめがわかります!
ビニールハウス用の遮光塗料とは?遮熱塗料との違い
ビニールハウスやその他でもいいのですが、塗料で温度対策を調べると「遮光」と「遮熱」の塗料が出てくると思います。同じようで違うこの2種類の違いを説明します。
漢字を読んだままなのですが、簡単に言うと遮るものが違います。
どちらかというと、遮熱塗料より遮光塗料の方が種類も多く作っているメーカーが多いです。それぞれの特徴と違いを説明すると
遮熱塗料の特徴 メリットとデメリット
- 光を遮らないため、植物の光合成を邪魔しない
- 効果期間が年単位で長く持つ
- 熱をカットでビニールハウス内が高温になるのを防ぐ
- 冬場に温度が下がらない
遮光塗料の特徴 メリットとデメリット
- 適切に遮光することで作物の丁度いい光を供給
- 大体添付効果期間が3ヶ月でちょうど夏場だけ防げる
- 短期用と長期用があるので地域で調整しやすい
- 雨で流れ落ちてしまうので、塗り直す必要がある
それぞれメリットとデメリットがありますので、どちらか自分の地域や使い道をよく考えて選びましょう。
塗料のビニールハウスへの塗り方
それでは遮光塗料、遮熱塗料のビニールハウスへの塗布方法を見ていきましょう。
基本的には
- 撹拌用の大きなポリバケツを用意して塗料に合わせた希釈倍率で溶液を作る
- よくかき混ぜて均一の希釈倍率になるようにする(下にたまりやすいので注意)
- 遮光塗料は噴霧器で塗布、遮熱塗料はホースなどでビニールハウスに満遍なく行き渡るように上から流れるような形でかけていきます。注意点として2つとも、風の弱い晴天時にビニールハウスが完全に乾いている状態で塗布してください。
その他塗料の説明書をよく読んで塗布していきましょう。また遮光塗料は雨などで流れ落ちてしまうので、雨が降ってしまうと塗布し直す必要があります。
ビニールハウス用遮光塗料のおすすめ
さて、実際に人気の遮光塗料を見ていきましょう。人気だったり実際に売れているものばかりです。正直違いはあまりないかと思いますが、特徴なども書いてきますので、そちらでお選びください。ですが、同じ商品でもタイプ違いであまり人気がないものは特注で発注してから時間がかかる場合もありますのでご注意を!
アキレス ファインシェード
こちらは標準・短期・長期の3タイプがあります。農ビと農PO用の遮光塗料で、ビニールハウスから落とすための剥離剤もあります。
タイプ | 標準 | 短期 | 長期 |
効果期間 | 約3ヶ月 | 約1ヶ月 | 約6ヶ月 |
内容量(L) | 8.8 | 8.0 | 8.2 |
塗布可能面積(平方m) | 800~1000 | 800~1000 | 800~1000 |
遮光率(%) | 20~30 | 20~30 | 20~30 |
特徴
- 農業用の被覆資材に吹き付けることによりハウス内の温度を下げます
- イチゴや軟弱野菜等の焼けを軽減し、作物品質を向上させるのに効果的です。
- ハウス内温度が下がるため、ハウス内での作業負担が軽減されます。
- 農業被覆資材(農ビ、農PO)に優しい原料を使用しているので農業用被覆資材を傷めません。
大同塗料 クールコート
こちらはビニールハウスの吹付け式太陽光遮光剤となります。農PO・ガラス、農ビ用と長期用の3種類があります。条件にもよりますが、外気温が30度を超えるような夏の暑い日においては気温を3-5度低下させます。
タイプ | 農PO・ガラス用 | 農ビ用 | 長期用 |
効果期間 | 1~2.5ヶ月 | 1~4ヶ月 | 落ちない |
内容量(L) | 10 | 10 | 10 |
塗布可能面積(平方m) | 1000 | 1000 | 1000 |
遮光率(%) | 約30 | 約30 | 約30 |
落しにくくする剥離遅延材と落とすための剥離促進剤もあります。
特徴
- 過度の直射日光を防ぐことで、作物表面の温度を低下させます。作物の痛みを軽減し、収穫期間の延長がはかれます。
- 外気温が30度を超えるような日にハウス内の気温を3~5度低下させるので作業自体が体感的に楽になります。
- 遮光ネットと比べて施工が楽なので、作業効率、時短が見込めます。
- 水性でアメリカの食品医薬局に登録がある添加物を使っているため、安心してお使いいただけます。
いちご、トマト、ナス、メロン、ハウスみかん、きゅうり、ほうれん草、アスパラガス、バラ、ゆり、菊など作物全般に効果があります。
スディラック社 温室用塗料 エクリプス 遮光用
こちらはオランダのスディラック社の遮光塗料で、晴れた日は光を遮り、雨の日は光を通すという画期的なアイテムです。晴天時は白色ですが、雨に濡れるとくもりガラスのように半透明になります。また希釈率によって遮光率を変化できます。タイプはF4・F6・LDの3タイプでそれぞれ3~5ヶ月、4~6ヶ月、6~7ヶ月の効果期間です。
タイプ | F4 | F6 | LD |
効果期間 | 3~5ヶ月 | 4~6ヶ月 | 6~7ヶ月 |
内容量(L) | 12 | 12 | 20 |
塗布可能面積(平方m) | 800 | 800 | 800 |
特徴
- 土壌に優しい成分で99%が生物分解されるので有機作物にも安心して使えます。
- ガラス、農POの温室やビニールトンネル温室に使える
- 晴れた日には温室の表面を不透明に、雨天は透明にして光を自動調節してくれる。
- 遮光レベルを希釈率によって自分で決められる。
- 除去剤で1時間足らずで除去できるが、自然分解もする
ビニールハウス吹付け式遮光剤・ソルシェード
こちらも海外製の吹付け式白色遮光塗料のソルシェードです。比較的お値段も手頃で時期になると一番問い合わせが多いのがソルシェードになります。太陽光線に含まれる可視光線と赤外線をカットしハウス内を涼しく保てるようします。
- 内容量:20kg
- 付着期間:1~2ヶ月
遮光を水で薄める倍率によって調整することが可能です。ただ雨が降ったりすると付着期間は当然短くなったり落ちてしまったりします。またビニールハウスのビニールがPOだと1ヶ月位で落ちることもあります。
主な希釈率と遮光率はこちら
希釈率 | 20kgにつかう水の量 | 吹付け面積 | 遮光率 |
3倍希釈 | 約60L | 670平方メートル | 70% |
3倍希釈 | 約60L | 400平方メートル | 82% |
4倍希釈 | 約80L | 830平方メートル | 64% |
4倍希釈 | 約80L | 500平方メートル | 78% |
5倍希釈 | 約100L | 1000平方メートル | 60% |
5倍希釈 | 約100L | 600平方メートル | 70% |
6倍希釈 | 約120L | 1170平方メートル | 56% |
6倍希釈 | 約120L | 690平方メートル | 67% |
ビニールハウス用遮熱塗料のおすすめ
今度は遮熱塗料のおすすめです。光ではなく熱を防ぐ塗料です。
光触媒コーティング剤 Tioティオ
温室のビニールやポ温室ガラスの屋外にに吹き付け塗布・展着させるタイプの遮熱剤。遮熱をしつつハウス内の明るさを保つ事が可能です。打ち水効果で温度上昇を抑制します。また透過性・防汚性・耐久性・抗菌性もあり!
- サイズ:1L
- 塗布面積:1アール当たり1Lを10倍希釈
- 効果期間:約3年間
特徴
- ビニールハウスなどの夏場温度を4度前後下げます
- ただ冬場は温度を下げない
- 塗布面の汚れがつきにくくなりビニールハウスの透明度を保持
- 遮光率は1%くらいなため光をほぼ遮断しません。
- ハウス内の柱などに塗布することで除菌・消臭効果もあり
光触媒コーティングとは(打ち水での温度上昇抑制の仕組み)
溶液をかけ、散水することで待機中の水分で薄い水の膜ができ、蒸発するときに一緒に熱も放出して内部の温度上昇を抑制します。簡単に言うとビニールハウス内の熱を表面についた水滴がくっつけて蒸発してくれます。
これが繰り返されハウス内の熱エネルギーが奪われる仕組みです。そして冬は空気が乾燥しているため、ビニールハウスに水分がくっつかず、熱が奪われないという仕組みで冬は温度が取られずにすみます。
ですので、ビニールハウスに散水することで効果的に温度を下げることができます。できるだけ散水をおすすめします。
販売がこちらしか見つかりませんでした。
トランスパー スディラック社
上でも紹介したスディラック社のトランスパーは涼しい環境を好む作物に対しても太陽の恵みを供給します。太陽光線中の熱の元「赤外線」を反射して温室内の温度を下げつつ、光合成に必要な光線はしっかり透します。
温室のガターやフレームに無害でガラス温室、ポリエチレン、プラスチックトンネルに使用できます。
晴天日に朝露が消えたときに噴霧してください。
悪天候にも強く、約5ヶ月持ちます。
成分は使用者に無害で環境にも害を与える成分は入っておりません。有機栽培施設にもつかえます。
晴れた日は光を遮り、雨の日は光を通します。
番外編 太陽光拡散剤 オプティフューズ
こちらもオランダのスディラック社のアイテムです。スディラック社は99%が自然分解するという環境に優しい塗料のため、有機栽培にもピッタリ!
温室にオプティフューズを塗布した場合、塗布していない温室に比べ太陽光の透過率が約5%増加します。太陽の光がよく当たる上の葉だけでなく影に隠れる下の部分まで光を届けることで光合成を促進します。またIRタイプは熱もある程度防いでくれるため暑さも少し和らぎます。
温室内の温度を下がるための塗料ではありません。
トランスパーやエクリプスLDを重ねて使用することも可能です。
まとめ
いかがでしょうか。遮光カーテンもいいですが、塗料で済ませてしまうのも手ですね。夏場だけであれば、3ヶ月ほどで自然に分解してくれるのが楽ですし、カーテンを作り付けていくよりも塗布するほうが簡単です。
また物によっては冬場でも大丈夫な遮熱塗料もあるので、管理がだいぶ楽になります。もちろん状況などの応じてカーテンと塗料を併用したりするのもありです。
ただ遮光塗料は雨で流れ落ちてしまうので、そちらは注意が必要です。