農家さんや趣味で農作物を育てる方にとって弊害はたくさんあります。天気や病気などが最たる例ですが、もう一つ忘れてはいけない最重要弊害が害獣による獣害。もちろん獣害という字を書きますが鹿やイノシシだけでなく虫や鳥なども獣害に入ります。
防虫や防鳥に関しては過去に記事を書いてみたので読んでみてください。
⇒防鳥網は効果あります!効果がある鳥よけネットの選び方【果樹園】
今回はその中でもイノシシ・鹿・モグラ・アライグマやハクビシンなどの獣による獣害の対策方法をまとめていきます。おすすめのグッツや自作できるアイテムなどもご紹介します。イノシシについては過去に詳しくまとめたものがありますので御覧ください。
⇒畑に来るイノシシ対策を中心に防獣資材やフェンスをご紹介!【鹿・クマにもつかえる】
年間数多くの農業資材メーカーの方とお話する機会の多い管理人がその中で聞いたお役に立てることや自身が働く資材屋での実際の人気や話題のグッツなどを踏まえてお話していきます。
害獣対策ってどんな方法があるか
一言で害獣対策といっても
- 防獣フェンスや防獣網による物理的対策
- 音による対策
- ニオイによる対策
大きく分けるとこの3つに分けることができるかと思います。
この3つはそれぞれ使うものが違うのはわかるとは思うのですが、一番効果が高いものやそれぞれの動物には何が効くのかなどの疑問も出てくると思います。答えを言ってしまえば
本気で対策するなら防獣フェンス
の一択です。
といっても音やニオイによる対策なども効果はあります。それぞれ説明していきます。
防獣フェンスによる対策と防獣フェンスの選び方
防獣フェンスや防獣網はアニマルフェンスやアニマルネットとも呼ばれたりします。もちろん防獣網よりは防獣フェンスの方が断然効果は高いです。
イノシシの対策の記事でもお話しましたがちゃんと建てることができればこの防獣フェンスによる対策が一番ですが、実は防獣フェンスもピンからキリまで有り更には電気柵というものもあります。それぞれを簡単に説明すると
- 防獣網:一番安価で設置できるが破られたり噛み切られたり下をくぐられたりする
- 防獣フェンス:最も効果的だが選び方を間違えると意味が殆どない
- 電気柵:フェンスではあるがどちらかというと電気が危険という心理的対策
となります。
効果がある順番で並べると
防獣フェンス>電気柵>防獣網
になります。もちろん場所や対策する動物によっては変わってきたり一概には言えませんが何よりも大事なのは設置方法。この防獣フェンス系の対策はしっかりと建てないと全く効果がないという代物になります。
防獣フェンスの選び方と設置
ご紹介した3つのフェンスですが簡単に選び方を説明すると
- 防獣網:小動物や鳥対策
- 防獣フェンス:イノシシや鹿、ハクビシンなどすべての害獣
- 電気柵:サルやハクビシンなど大抵の害獣
となります。
防獣網はやはり耐久性が低いので大型の哺乳類というよりは小型の害獣向けとなります。網目の5cm以下の網目のものを選び、下をくぐられたりする可能性も高いので地面にも網を50cm程這わせしっかりとアンカーで打ち付けくぐられないようにしましょう。安価なので他の対策グッツと併用しましょう。
防獣フェンスを選ぶ際にはフェンスの金網の種類を理解することも大切です。以前金網の種類に付いて記事をかせていただきましたのでそちらをご参考ください。
⇒金網フェンスの用語説明と選び方【開目・ピッチ・メッシュなど】
とりあえず一番耐久性が高いのはクリンプ金網という金網でしっかりとした防獣フェンスは大体このタイプの金網かこれに近いものを使っています。実はイノシシなどは鼻でフェンスの下の方を掘ったりしゃくりあげて中に入ることもあるため防獣網と同じように地面にも金網を張ってアンカーで固定し対策をしましょう。
またサルや鹿などはフェンスの上から入ってくることもあります。もちろんイノシシも飛び越えることはありますが動物が上を飛び越えていくというのは意外に少ないとも言われており特に夜など目が見えない場面では何があるかわからないフェンスを飛び越えるのは危険に迫られた場合くらいとも言われます。
ただサルは登ることができるため特殊なねずみ返しのような猿用フェンスを上につけて対策する必要があります。
そして電気柵。こちらはまずいちばん大切なことは
24時間電気流しっぱなしにしないと効果が薄い
ということです。特にイノシシは鼻に電気柵が当たらないと体の毛が電気を通しづらく意味がありません。最初に初めてみたときに鼻で触れさせ電気が流れ危ないものと認識させないと危なくないものと判断し平気で突き抜けていきます。
サルや鹿などには効果がありますがある程度の知識が必要で設置もこの3つの中では一番難しいものです。
⇒防獣網と防獣フェンスが最適?!失敗しない選び方と張り方【それ間違っているかもしれません】
音や超音波などで対策
音や振動・超音波なども害獣対策としてよく聞きます。動物には苦手な周波数があるとされており、それらを流すことによって動物を近づけないという対策方法となります。例えば
250~800Hz(75~80db)の音はイノシシ・カモシカ・熊などに効果があり、450~1800Hz(90~95db)は鹿・ハクビシン・カラスなどに効果があるとされています。
ただ正直今回ご紹介させていただいた中で一番効果が薄いのがこの音による対策だと思います。その理由は慣れ。音などは慣れてしまうとなんともないので殆どの商品のレビューには最初は効果があったものの次第になくなると書かれています。もちろん各商品慣れさせないためにパターンを変えて鳴らし続けたり、ランダムに流れたりと色々慣れに対する対策もしています。
その中で振動対策で一番効果があるのではと言われているのはモグラです。こちらは風車のような物を作り地面に刺すことで風で回る風車が地面に振動を起こし、それを嫌うモグラが遠ざかるというものです。自作もでき効果もあることからよく紹介されています。
風車ではなくソーラー電池で振動を起こすタイプのものもあります。
おすすめの音系の防獣対策グッツ
音や振動・超音波で人気のあるものが以下のものとなります。
- 大樹トレーディングのびっくりシリーズ
- ソーラーモグラ撃退機
- 爆音器
基本的に音を発する撃退グッツなので近所や夜の使用には注意が必要です。
イノシシや鹿・クマなどには大樹トレーディングさんのびっくりシリーズがとても人気です。かなり大きな音でびっくりさせて動物を近づけさせないというアイテムです。基本的に動物は熊よけの鈴なども有名ですが警戒心が強く人間や自然界にない音に近づこうという気はありません。
それを利用しイノシシ・クマ用と鹿・ハクビシン用の2つに音別に分けたラインナップがあります。やはりしばらくすると効果はなくなるという声はあるもののレビューは比較的よく効果を喜んでいる声が多くあります。
ソーラーモグラ撃退機はモグラ対策グッツの中でも特に人気があるものです。先程の風車は風がないときには効果がないためソーラーで充電できるこちらは風がないときにもモグラの対策ができます。
レビューを見ても評価が高く安価なもののちゃんと対策が出ているというものが多数です。とはいえ安価なためか不良品や壊れることも多くもちろん全く聞かなかったという声もあります。
爆音器は最初のうちはかなり効果がある対策グッツではありますが、その名の通りかなりの音が出すことで騒音によるご近所トラブルも起きやすいグッツになります。主に防鳥で使われることが多いのですが、市や街によって設置に関する令が出ているところもありますので使用する場合はよく調べてから設置しましょう。
レビューでも評価は高めで特にジェットバンクという爆音機が人気が高いです。
ニオイで防獣対策
動物が嫌うニオイでの忌避対策は昔からよく使われており唐辛子などはその最たるものでモグラや防虫などにも使われています。また天敵のニオイを使う場合もありウルフピーなどは有名でしょう。
果たして狼が絶滅した日本でウルフピーを使う意味があるのかと思いますが、動物には本能的に食物連鎖の頂点に立つ動物のニオイを避けるという防衛反応がありイノシシやクマまで効果が期待できるとのこと。
ウルフピーや唐辛子成分の動物忌避剤の他に猫用やネズミ用・ハクビシン用・アライグマ用など動物別に用意されている動物忌避剤も目立ちます。実はそういったもだと同じメーカーの場合、成分は一緒でパッケージのみが違う場合が多いというのが本音で業界の方なら大体知っています。もちろんちゃんと成分を分けているものかなり数少ないですがあります。
基本的に天然成分を使っているものが多く農作物などに影響を与えづらいというのがこちらのメリットで効果も高めで価格も試しやすい値段で人気があります。とはいえ慣れてくると効果がなくなってくるので複数違うものを使ったりするのも効果的とされています。
人気のニオイによる害獣忌避対策グッツ
特に人気が高い害獣忌避のものは
- いのししペレット
- 亥旦停止
- ウルフピー
があります。
いのししペレットはゼウスジャパンという会社が作っており、唐辛子のカプサイシンと有機肥料で作られている忌避剤で、即効性の粉と遅効性のペレットが混ぜられていることにより撒くだけで約2ヶ月間効果が期待できる人気の対策グッツです。
即効性があり効果があるという声が多いものの雨が降ると一気に効果がなくなったり、そもそも全く聞かなかったという声が聞こえます。1袋で30~60平米撒けるとのことですがある程度多めに撒いたほうが良さそうです。
亥旦停止は「いったんていし」と読みます。高速道路や鉄道など公共の場での動物忌避として使われているもので動物が嫌う成分を混ぜて作られているシートです。このシートをぶら下げるだけで約1年ほどの効果が期待できます。
また成分は一緒なもののイノシシは青しか見えない、鹿は赤しか見えないという色の特性を考えてそれぞれ動物別に忌避剤が作られており対策がされている人気商品です。
ウルフピーはその名の通り狼の尿で作られている動物忌避剤になります。いちばん有名なものとしてはカナエのウルフピーから最近出たファイトクロームのキープアウトまでたくさんのウルフピーがあります。
他にもコヨーテピーやライオンやピューマのものなどがあり、それらを肉食動物の尿成分を容器に入れてぶら下げたり撒いたりすることでイノシシや鹿などを避けるというものになります。
その他の対策方法
実は今回紹介した防獣フェンス・ニオイ・音以外にも対策方法はあったりします。例えば
- 檻などによる捕獲
- 植物による忌避
などです。捕獲にあたっては檻や罠などで動物を捕獲します。捕獲する場合は申請を出さないと違法になってしまいますので必ず申請を出しましょう。
意外に檻やくくり罠などは簡単に手に入りネットなどでも売っています。
また主に鹿対策なのですが、鹿が嫌う植物を植えて忌避する方法もよく使われています。シャクヤクやクリスマスローズ・マリーゴールドやミント、チカラシバやミドハギなどがそれにあたり庭や畑などが鹿の被害にあっている場合は作物と一緒にそれらを植えてみましょう。
補助金
実は農家にとって大きな問題になっている獣害への処置として鳥獣被害防止総合対策交付金というものがあり、簡単に言えば電気柵など害獣対策グッツを買うことへの補助金が出る可能性があります。
とはいえこれは個人の家などは対象ではなく畑などを持っている農家さんなどが対象です。
それぞれの市町村によって細かくは違うようですが、対策グッツを買った領収書と書類を提出しある程度補助金が得られます。対策グッツにも補助金対象商品というものがあるので、補助金を申請するつもりの人はそのアイテムが対象商品かどうかよく確認しましょう。
まとめ
さて今回は大きく防獣対策方法と対策グッツの選び方についてお話しました。
まず大きく分けると
- 防獣フェンス
- ニオイによる対策
- 音による対策
に分けることができ一番効果があるのは防獣フェンスでした。防獣フェンスもしっかりと建てないと意味がまるでないのでとりあえずフェンスなら何でもいいわけではありませんでした。
ニオイや音による対策は慣れてしまって効かなくなってしまうこともありますが、初見では効果がかなりありいくつかの方法を併用することでかなり長い期間効果を持たせることができます。
それらの対策には補助金が出る可能性があり市町村によって条件は違いますが、補助金が出る場合はしっかりと申請しましょう。個人の場合は保証金なども出なく勝手に駆除などをしていますと法律違反にもなるため業者さん に頼むのも手です。