最近きのこ栽培が流行ってきています。きのこの菌といえば栽培している方からもらってくるイメージでしたが、最近は初心者用のきのこ栽培キットからプロ向けの種菌などもインターネットショッピングなどでも見かけるようになりました。
きのこ栽培は比較的簡単でこどもからお年寄りまでできるということや、初期費用が早く種類によっては収穫も早いことからきのこ栽培が意外と儲かるという話もあり事業や趣味として注目もされています。
今回はそんなきのこ栽培についてのイロハをお話していきます。年間数多くの農業資材メーカーの方とお話する機会の多い管理人がメーカーの方聞いた様々なお話や、実際に働く資材屋での人気などを踏まえてお話します。これからきのこ栽培を初める方やプロの方でも復習などにバッチリです。
栽培しやすい種類と難しい種類
簡単に栽培できるといわれるきのこですが、その種類によって変わってきます。きのこを栽培で考えると大きく分けて2つの種類に分けることができ、それが
- 菌根菌:栽培が難しい
- 腐生菌:栽培がし易い
です。それぞれ説明していきます。
菌根菌のきのこ
菌根菌のきのこを簡単に説明すると
木を共生するきのこ
です。菌根菌のきのこは自ら有機物を分解して栄養を得られないので、植物から光合成による糖やアミノ酸をもらいそのかわりに土の中で植物の根よりも広範囲に菌の根を張ることで養分や水の吸収を助けます。種類としては松茸・ホンシメジ・トリュフ・タマゴタケなどがあります。
宿主が必要なため栽培が難しく、山などに実際に入って収穫する必要があります。ちなみに共生をしないで寄生、つまり宿主を枯らしたり殺したりするきのこもあります。それらは寄生菌と言われるきのこの種類で有名な冬虫夏草やナラタケなどがあります。
腐生菌のきのこ
次は栽培のし易い腐生菌のきのこです。これらのきのこは有機物を分解・吸収ができ落ち葉や木材などに生えています。しいたけやなめこ、舞茸、きくらげ、マッシュルーム、ぶなしめじなどスーパーでもよく見るものがこれにあたります。
腐生菌の中にも木材腐朽菌や落葉分解菌、糞生菌など分解するものによって細かく種類が分かれます。しいたけやなめこは木材腐朽菌、ムラサキシメジは落葉分解菌、そしてマッシュルームはツクリタケともいいますが別名バフンタケと呼び馬糞を好んで生えます。
きのこの栽培方法
きのこの栽培方法は大きく分けて
- 原木栽培:切り出した木で栽培
- 菌床栽培:人工的な培地で栽培
の2つに分けることができます。詳しく説明していきます。
原木栽培とは
きのこの栽培といって真っ先に頭に浮かべるイメージがこちらではないでしょうか。切り出した木が並べてありそこからきのこが生えているそのイメージです。切り出した木を「ほだ木」といい、そのほだ木作りに1~2年かかりますが収穫は数年に渡ってできます。
もちろんほだ木で栽培するため木材腐朽菌のきのこを育てることになります。ほだ木なんでどこで手に入れればいいのかと悩むかもしれませんが、実は種菌と一緒で楽天などにも売ってたりするので比較的簡単に手に入ります。
原木栽培で使う種菌は3種類あり、それぞれ特徴があります。
- 種駒:棒駒菌ともいい、ほだ木に菌が回るまで時間がかかる
- 形成駒:オガクズを固めたもので、扱いやすく菌の周りも早い
- オガ菌:穴に埋め込んでロウや米ぬかで穴を塞ぐという手間がかかるものだが菌の回りは一番早い
となります。それぞれほだ木に穴を開け、その穴に菌のついた木の駒(これが種菌)を打ち込み栽培します。
原木栽培の流れ
より天然に近い状態でそだてられる原木栽培の流れは
- ほだ木となる木を伐採
- ほだ木作り
- 菌を植える
- 仮伏せ:湿度や温度を保って菌を原木にしっかり根付かせる
- 本伏せ:ほだ木を組み菌を原木全体に広がるように調整する
- きのこ発生:実は菌を植えたところから生えてくるわけではない
というものになります。
プロの方はほだ木作りからしますが、初心者の方は手軽に育てられるきのこ栽培セットなどは種菌やほだ木がキットに含まれているので仮伏せから入ることができます。
原木栽培では仮伏せや本伏せがそれぞれのきのこの種類によって変わってきます。また原木の太さや大きさもきのこの発生の速さに関わってきます。短かったり細い木のほうが菌糸の回りが早くすぐにきのこが生えてきます。
種菌や種菌を打ち込む穴を開けるポンチやドリルや穴を埋めるロウなどはインターネットなどでも簡単に手に入ります。
菌床栽培とは
こちらは初心者やちょっとやってみたい方におすすめの栽培方法でもあります。ただもちろん本格的にきのこを栽培したい方にもできる栽培方法でもあります。
菌床栽培には露地で栽培する方法もありそれも2つの方法に分けることができて
- 土中埋設法:菌床を土で覆って野菜のように育てる
- 置床法:袋に覆った菌床を棚などにならべ、袋を切りその切れ目からきのこが生える
があります。
土中埋設法は環境の変化に敏感な舞茸やハタケシメジなどに適していますし、置床法はしいたけやなめこ、ムキタケなどに適しています。
基本的には瓶や袋や箱などに詰めたオガクズやコーンコブ、米ぬか、フスマなどの培地(菌床)に菌を植えて栽培する方法で栽培キットなどもこのパターンのものが多いです。栽培期間が短縮されさらに調整も発生も比較的早いのが特徴です。
とはいえプロの方も空調施設などを利用しこの栽培方法を取っているため初心者からプロの方まで使われています。
菌床栽培の流れ
菌床栽培の流れは
- 菌床を用意
- 植菌
- 施設や袋を被せたりして栽培:菌床が真っ白になる
- きのこの発生
キットなどは菌床となるものはついてきますが、最初から作る場合はオガクズなどを使って菌床を作ります。植菌からは水やりや温度・湿度などの管理をしながら育てます。
使い終わった菌床もオガクズやコーンコブの成分は土壌微生物にとって最高の餌となるため、減肥ができて更に収穫の量も上がるという実績がありネギやにんにく、果樹の桃などの栽培の堆肥に使われています。
きのこ栽培は事業や副業として儲かるのか
きのこ栽培が流行っていて、育てる人が増えてきて中には会社員をやめてきのこ専業農家になったという話もききます。その中で聞くのが
きのこ栽培は儲かる
という話。それははたして本当なのでしょうか。答えは
そう言っている人もいるが定かではない。でも言われる理由がある。
といったところです。きのこ栽培が儲かると言われている要因は
- 初期費用が安い
- 組み合わせで年中栽培可能
- 副業や新規事業でも入りやすいくらい簡単
というものです。それぞれ詳しくお話します。
初期費用が安い
きのこの菌床は500円以下で買えます。またインターネットなどでも簡単に買えるため安価で手に入りやすく初心者や副業でも挑戦しやすい。場所があれば原木栽培で原木自体もそれほど高くないし、置床法であれば小さなビニールハウスでもかなりの量を育てることができる。
農家であればビニールハウスなどスペースはすでにあるので副業としてもやりやすいのも嬉しいところです。
組み合わせで年中栽培可能
きのこは種類にもよりますが、1菌床で300g~1kg収穫できます。それが収穫時期を考えて栽培すると年中栽培収穫が可能になります。つまり連続的に収入を得ることができるのがきのこ栽培の大きな利点になります。
簡単に栽培できる
今まで上でも説明してきましたが、基本的に簡単に小スペースでも大量に育てることができます。栽培方法も決まっており収穫も安定しやすく、また作業自体も重いものを持ち運んだり運動量も多いわけではないため高齢者や女性でも働きやすいという特徴があります。
実際に儲かるかどうかは答えるのが難しいですが舞茸やえのき、ぶなしめじなどはよく取引されるし、原木栽培のしいたけは直売所などでよく売れるというお話も聞きます。
まとめ
今回は最近話題になってきているきのこ栽培についてお話しました。
まず栽培しやすい腐生菌のきのこと栽培しにくい菌根菌のきのこがありました。
また栽培方法としてはきのこは原木栽培と菌床栽培の2つに分けることができますが、菌床栽培にはさらに2つに分けることができます。初心者は栽培キットなどつかって菌床栽培をしてみましょう。
基本的にきのこ栽培は重労働もなく簡単なため新規事業や副業などで入る人が多くいます。初期費用も比較的安いため気になった方はまずは栽培キットなどから試してみましょう。