家庭栽培でも本格的な農家さんの栽培でも人気のあるじゃがいも。春と秋に一年に2回も栽培できて初心者でも初めやすい家庭菜園用の野菜でもあります。保存もきいて国によっては主食にもなるじゃがいもを育てるときに種芋って言葉を聞いたことはないでしょうか。
スーパーで買ってきたじゃがいもをそのまま畑に植えようと思っていた方はちょっと待ってください。芋だから全部一緒だと思いますよね。今回はそんなじゃがいもの種芋についてスーパーで変えるじゃがいもとの違い、種類や選び方と買い方についてお話していきます。
年間多くの農業資材メーカーの方とお話をする機会の多い管理人が自身が働く資材屋で得た知識や農業資材メーカーの方から聞いたお話を元にお話します。
スーパーで売っているじゃがいもって種芋に使えない?何が違うのか
じゃがいもを栽培してみようと思って全く知識のない方だとスーパーでじゃがいもを買ってきてそのまま畑に植えてしまうと思います。できるかできないかというと
できないことはない
というのが答えになります。ですが実はスーパーで売っているじゃがいもと種芋として作られたじゃがいもには違いがあります。それを簡単に言うと
- 市販のじゃがいも:病気にかかっていたり害虫が付いている可能性がある
- 種芋:きちんと消毒されていてウイルスや害虫などがついていない
という違いになります。食べる方に病気がある可能性があるの?逆じゃない?と思われる方もいるかも知れませんので簡単に説明します。
スーパーなどで売っている市販のじゃがいもは病気にかかっている可能性があると上でも話しましたが、それらは人体に影響のあるものではありませんのでご安心を。また売り物ということで発芽を遅らせるように処理もされています。そのため種芋としては使いづらいものとなります。
種芋として作られるじゃがいもは病気や害虫などが発生しないように薬剤処理されており、それは法律によって種芋は検査が義務付けられています。ですので種芋を購入すると検査合格の証が袋やダンボールにあります。発芽処理は行われたり行われなかったり場所によって変わってきます。
食用と種芋の違いポイント
つまり市販のじゃがいもは発芽処理や病気害虫が付いている可能性があって畑にそれらを蔓延させてしまう可能性があるため種芋には向かない。種芋はしっかりと薬剤処理をしているため食用には向かないと覚えておきましょう。
種芋を食べてしまった!大丈夫?
正直種芋を食べてしまったという話はちょくちょく聞きます。まずは種芋を買ってきた袋を見てみましょう。最近は余ったら食用にできる種芋もあり、その場合は袋などに書いてあります。とはいえ基本的には消毒など薬剤を使われているので食べるのはオススメしません。
すでに食べてしまった場合、もちろん緑がかってしまった有名な毒素のソラニンが含まれていそうな部分やじゃがいもの芽などは食べていないと思います。それに加えしっかりと皮を向いて食べているのであれば薬剤の影響も殆どないと言われます。ただ食べても大丈夫ということにならないので、あえて食べないように。
良い種芋を選ぼう!種芋の選び方
種芋はホームセンターやインターネットなど様々なところで販売されています。ホームセンターなど実際に種芋を見て触れるところで買う場合は以下の点を見ながら種芋を選びましょう。
- 皮を見る:ハリがあり傷などがないもの
- 重量:持ってみて中身が詰まってそうな重いもの
- 芽:白くなく太い芽が点在して2~3本ある
それぞれ簡単に説明していきます。
皮の状態
こちらはスーパーなどで買う時を同じで、種芋の形がふっくらとしていて皮にシワなどがなくハリがあるものを選びましょう。もちろん傷やシミなどもしっかりみることが大切です。シワがあるものは内部の水分が減ってしまっており保管状態が良くなかったものでしょう。
種芋の重み
種芋を手に取り重さを感じてみましょう。こちらも食用を買うときと同じでずっしりと重みがあって中にしっかり詰まっていそうなものを選びましょう。
軽いものは中がスカスカな可能性が高く、発芽するための栄養が弱くなりその後の生長にも影響が出てきます。
芽の状態
まずは芽が出ているかどうか。芽が出ていないものは休眠期間である可能性があって芽を出さないかもしれません。ですのでしっかりと芽がでているかを確認します。
春栽培の場合は種芋をカットすることがありますが、その場合一点からしか芽がでていない種芋はカットしても芽がないものができてしまいます。また芽が細長く伸びているものも貧弱ないものが育ってしまうため避けましょう。太い芽が点在してでているものが良い種芋です。
また色もよく見て起きましょう。十分に太陽の光を浴びていないと白っぽい芽になるため白い芽よりは緑や紫色の芽の物を選びましょう。種芋を買ったら太陽の下で3週間くらい日光浴する(浴光催芽)ことで太くで丈夫な芽を伸ばすことができ、5mmほど育ってから植え付けしましょう。
種芋の種類と購入の注意点
ここでは人気のある種芋の種類をあげていきます。種芋は春栽培に適したものと秋栽培に適したものがあります。秋栽培に適している種芋は一般的に休眠期間が短いものとされており反対に休眠期間が長いものは春栽培向きとなります。
例えば春栽培向きのものだと、とうや・ メークイン・キタアカリ・男爵・インカのめざめなどがあり、秋栽培できるものだとデジマ・アンデス・ユタカなどがあげられます。ちなみにジャガイモは畑に植えてから収穫までの期間で
- 早生種
- 中生種
- 晩生種
に分けることができます。
ホームセンターなどにいって探す場合もインターネットなどで購入する場合も注意点があります。それはどの品種もすぐになくなってしまうという点です。種芋は実はとても人気ですぐに売り切れになってしまいます。
もちろん生産者もたくさん作って入るのですが、それ以上に無くなるのが早く人気の品種は売り切れるのも早いです。できるだけ早めに買っておきましょう。
また食用と種芋をちゃんと商品名を確認しましょう。間違って買う人多めです。
男爵(だんしゃく)
おそらく誰もが知っているじゃがいもの品種ではないでしょうか。こちらは春栽培に向いているじゃがいもになります。早生種という普通の時期よりも早く実る品種で環境にも適応能力も高く栽培しやすい種類です。
ホクホクとしたじゃがいもらしいじゃがいもで、コロッケやポテトサラダなど定番料理などにもよく使われるものです。丸くゴツゴツしているのが特徴でその分芽をとったり皮がむきにくかったりします。また煮崩れしやすいという特徴もあります。
キタアカリ
男爵いもから作られた品種でこちらも休眠期間が男爵よりは長くはないものの長く春栽培に向いています。こちらも早生種なので寒さを気をつければ芋の出来も早いので秋栽培もやっているかたもいます。
男爵に似た特徴を持っていますが、男爵より黄色みがかかっていて甘みもあります。その特徴からクリに似ており栗じゃがいもと呼ばれることもあるとのこと。
メークイン
男爵とおなじく有名な品種でイギリス原産。メイクイーンとも言われます。こちらも春栽培に向いている早生種で休眠期間も男爵ほどではないものの長め。収穫量は男爵いもよりは多いですが大きさにばらつきが出やすくもあります。
ツルッとしたくぼみも小さく皮が向きやすいじゃがいもで煮崩れもしにくく煮物などに使いやすいじゃがいもです。ホクホク感は少なめで白っぽい実の色をしています。
インカのめざめ
とても南米を感じるその名前からは想像もつかないと思いますが、日本向けの品種です。南米の主食である南米のじゃがいもを日本向けにしたものです。早生種で春栽培向けの栽培期間が短く7,80日で完熟するのも特徴です。ただ不揃いで収穫量も少なめ。
小ぶりでさつまいものような黄色の実の色と甘みが特徴のじゃがいもで実際に糖度も6~8度もあります。実際に南米で食べたじゃがいももさつまいもかと思うような甘さだったので南米を思い出す味です。あまり聞かない名前ですが、実は栽培に人気で種芋もよく売れます。
とうや
「じゃがいもYウイルス」という病気とセンチュウに対する耐性を持っている早生種で肥大化もしやすくおすすめの春栽培用の芋です。育ちが早いため追肥の必要もなく初心者でも育てやすいのが特徴。名前の由来は洞爺湖だそうです。
大きくなりやすく表面の凹凸がないので調理がしやすいじゃがいもで、ホクホク感はありませんが煮崩れがしにくく煮込みに合います。切った後も変色がしにくいので加工品にも適しています。
シンシア
メイクイーンにもにているこちらはフランス生まれのじゃがいもです。中生種で休眠も長めなので春栽培に向いています。芽が出にくく貯蔵にも適しているので家庭菜園に特におすすめ。
大きめでゴツゴツ感も少なく皮が向きやすいのが特徴で、煮崩れもしにくいどんな料理にも使いやすいじゃがいもです。
十勝こがね
じゃがいも栽培で厄介なセンチュウに耐性をもっている早生種で休眠期間が長いため貯蔵にも向いている品種です。寒冷地では夏栽培をしています。
大きめでメイクイーンよりも煮崩れがしにくいとも言われ、メイクイーンのように皮も剥きやすいという調理がしやすい品種です。ただホクホク感は多少感じることができます。
アンデスレッド
パッとみさつまいもにも見える品種です。中晩生品種で春・秋栽培の二期作が可能ですが長期保存に向かなくすぐに芽が出てくる生命力が強いのが特徴です。収穫量が多いので家庭菜園にもおすすめ。
切ってみてもさつまいものようで煮崩れがしやすいのでポテトサラダやマッシュポテトなどに向いています。ホクホク感と甘みがあるじゃがいもです。
デジマ
春栽培と秋栽培ですこし性質が変わってくる品種です。中晩生で休眠が短めのため二期作ができ収穫量も多めというじゃがいもです。
皮ごと調理しても皮感が口に残りにくいのが特徴です。秋栽培だとホクホク感が春栽培より多めになりコロッケなどに向き、春栽培のものは煮崩れが秋栽培モノよりはしにくくなります。
他にも様々な芋の品種がありますが特に人気や特徴があるものをあげてみました。
まとめ
今回はじゃがいもの種芋について簡単にお話しました。
種芋は食用と違った作り方をしているので基本は食べられるものではなく、食用は基本的に種芋には向きません。ただ間違って食べてしまった場合も薬剤処理をされて入るもののきちんと皮を綺麗にむいて芽も取っていればさほど気にしなくて大丈夫でしょう。
種芋を選ぶときはできればホームセンターなどで手にとって実際に見て選びましょう。見るものの基準は皮・重さ・芽です。インターネットで購入する際は信頼できるところから購入するようにしましょう。
じゃがいもと一口で言っても様々な品種があります。中には春栽培をしたほうがいいものなどもあり気をつけましょう。もちろん品種によって味や性質が異なりますので、色々挑戦してみても面白いと思います。