石灰といえばグラウンドに引く白線というのが一般的なイメージですが、農業でも石灰は切っても切れない成分となります。農業と言ってもプロから家庭菜園までつかえるのでプロでない方も石灰の使い方や効果・種類などは覚えておいたほうがいいのは間違いないです。
プロの方はもちろん石灰を使っていらっしゃると思いますが、石灰にはいくつか種類がありどれを使うかによって成分や効果はかなり変わってきます。今回は家庭菜園からプロの農家さんまで使う石灰の種類・効果・使い方をまとめます!
年間多くの農業系の展示会に赴き、沢山の農業資材メーカーの営業さんからお話を聞く機会の多い管理人が、自身が働く資材屋での売れ筋や人気等をふまえて石灰についてお話いたします。これを読めば石灰についてバッチリわかってしまいます。
農業でよく使う石灰の種類
石灰といえばカルシウムが主な成分です。農業ではそのカルシウムを肥料としてや土壌のpHを調整する土壌改良材としてよく使います。また殺菌・消毒・肥料・病気予防などなど様々な用途で使われます。ですが石灰の種類によって成分や使いみちが変わってきますのでぜひとも覚えておきましょう。
まず農業で使う主な石灰の種類と特徴です。
- 消石灰:アルカリ分60%以上 酸性土壌の中和などに使われ即効性が高い
- 苦土石灰:アルカリ分53~56% マグネシウムを含む炭酸カルシウム
- 有機石灰:アルカリ分46~49% 緩やかに長期に渡って効果が継続する
こちらの3点ががよく使われる石灰となります。他にも生石灰や硝酸カルシウムなどがあるのですが、上の3つに比べて使用頻度は高くないので今回は省きます。
それではそれぞれ細かく効果や使い方を説明していきます。
強アルカリの消石灰の効果や畑での使い方
まずは消石灰です。まずはいちばん大事なことを覚えておきましょう。
消石灰はかなり強いアルカリ性で目に入ると失明する可能性があります。事実そのような被害が報告されています。消石灰を扱う際は手袋・ゴーグルを着用し使用しましょう。
消石灰は水酸化カルシウムで即効性が強く、酸性土壌をすぐに中和する際に使われることが多いです。日本は比較的雨が多いので土の中のカルシウムやマグネシウムが流れ出てしまうことがおおく土壌が酸性になりやすいのでそういったときの救世主となってくれます。
また当然成分が水酸化カルシウムなので、きゅうりやトマトなどのカルシウム不足への補給としても使われます。きゅうりの葉っぱの縁が茶色くなり始めたり、トマトの尻腐れ、また作物の生長が遅い場合はカルシウム不足が考えられますので、消石灰の水溶液を作りカルシウムを補給しましょう。大体の植物はpH6~6.5の弱酸性を好みますがほうれん草などのようにpH6.5~7を好む作物もありますので、作物によって使い分けましょう。鉢栽培では消石灰は強すぎるので使用は控えましょう。
またいもち病・うどんこ病・害虫対策にも使っている方もいらっしゃいます。石灰の粉を直接葉にかけたり、水溶液にして散布したりして病気になってからも予防としても使います。長ネギなどは上からふりかけて軟腐病の予防としても使います。ただ若い芽には葉枯れになることもあるので育苗の段階では使用は控えましょう。
- 強アルカリ性
- 即効性
- 酸性土壌のpH調整に使う
- カルシウム不足に
- 病気予防や害虫対策に
消石灰水溶液の作り方
何にでも使える消石灰水溶液の作り方を紹介している動画がありましたので、ご紹介します。
消石灰をポリバケツに入れ水を入れてかき回して一日たって沈殿したあとの上澄みの部分を消石灰水溶液として使います。消石灰は水1Lに2gしか溶けないという特性があるので、ある程度適当に作ってもちゃんとして消石灰水溶液ができます。pH値は12と高め。使ったらまた水を付け足し水が白く濁っている間は使えます。
マグネシウムを含む石灰苦土石灰の効果や使い方
苦土石灰は岩石が原料となるカルシウムでアルカリ分が55%以上ありpH9.7で炭酸マグネシウムを含みます。効き目は消石灰にくらべて反応が緩やかです。そのためすぐに播種や定植ができます。またマグネシウムを含んでいるのでカルシウムとマグネシウムを同時に補給することができます。マグネシウムは葉っぱの光合成に必要なクロロフィルを作るのに必要な要素なので、マグネシウムが少ないと葉っぱが下から黄色くなり枯れていきます。
もちろん苦土石灰も酸性の土壌を中和やアルカリ性にする土壌調整にもよく使われます。巻きすぎると植物の成長阻害や病気が発生する場合があるので土壌酸度をしっかりと図りながら調整していきましょう。ただ消石灰と違いアルカリ性は強いわけではないので消毒としては使えません。
こちらも消石灰のように上澄み液をダニや灰色かび病などの予防に使うこともできます。水1Lにつき粉末苦土石灰を1g入れてよく混ぜたあと上澄みをスプレーなどで散布して使いましょう。
- アルカリ性55%
- 緩効性
- 消毒には使えない
- マグネシウムを補給可能
- ダニや病気の予防に使える
苦土石灰の必要量と使う時期
苦土石灰を酸度調整として土に含める場合は植え付けの1~2週間前にやっておくのがベストです。上でも説明したとおり苦土石灰は緩やかに効果が出てくるので、そのタイミングで巻いておくとじわじわ効いてきます。
畑1平方メートルにつき100g撒くか1kgの土に対して1.5g含めるように撒きます。ただ鉢植えの場合は土1Lあたり3~5gを目安に含めましょう。土にまいたらよく土と混ぜておきましょう。もちろん土壌酸度計でしっかりとpHを図りながらpHを調整していきます。
消石灰と苦土石灰の違い
消石灰は即効性があり、苦土石灰は緩効性という最大の違いがあるため、消石灰は前もって散布しておいてから作物などを植えるという使い方をすることが多く次作の準備として使うようですが苦土石灰は散布してすぐに作物を植えることができます。
また苦土石灰にはマグネシウムが含有されているためにマグネシウムを求める作物には特にいいでしょう。
初心者でも扱いやすい牡蠣の殻などが有名な有機石灰の効果や使い方
有機石灰は貝殻粉末など動物由来の石灰で、牡蠣の殻が使われれることが多いです。今回は牡蠣の殻石灰として説明します。下記殻石灰は牡蠣の殻を焼いて作った水酸化カルシウムでアルカリ度は40~45%と低めです。少しずつ分解されて長期に渡って効果を持続できる緩効性の石灰となります。含有カルシウムも若干少なめです。その代わり牡蠣の殻には窒素、リン酸、カリやマンガン、ホウ素、亜鉛なども含んでいます。
消石灰や苦土石灰とちがいアルカリ度が低いため極端に強い酸性の土壌中和には効果は薄いですが、徐々に中和させて行くなど土壌変化が緩やかに起こるためすぐに苗や種を蒔くことができます。さまざまな有機肥料や化学肥料などと組み合わせても使うことができます。
もちろん牡蠣の殻はほぼカルシウムで出ているため、病気の予防やカルシウム不足にも効果的です。畑や花壇などには1平方メートルに150~300gを撒き、鉢やプランターの場合は60~100g混ぜ込みます。
何より嬉しいのが石灰は間違って使いすぎると土が固くなってしまう性質があるのですが、牡蠣の殻は土の中の微生物を活性化させるため土が固くならないので園芸初心者にとてもおすすめができます。
- 初心者でも使いやすい
- アルカリ度は40~45%
- 緩効性
- カルシウム以外にも様々な成分を含む
- 植え付けも直ぐにできて他の肥料も使える
まとめ
今回は手軽で安価で手に入り様々な効果を持つ石灰についてお話しました。農業で使われる消石灰・苦土石灰・有機石灰はそれぞれアルカリ度や効果が出るまでの時間がかなり変わってきます。それぞれの特性にあった使い方をしましょう。
- 消石灰:強アルカリ性で即効性あり。危険でゴーグル、手袋必須
- 苦土石灰:強めのアルカリ性で緩やかに効いてくる。
- 牡蠣殻石灰:弱アルカリ性でゆるく長期的に徐々に効果が出る
また扱う際は下手をすると失明の危険性があるものもあるので、ゴーグルと手袋をつけましょう。
農業の土壌改良材としてや肥料として病気の対策や予防・害虫対策など様々な効果がある石灰の使い方をよく知り、それぞれ作物や効果にあったものを探して使っていきましょう。