野菜を育てていらっしゃる農家や家庭菜園をしている方に必須の農業用マルチシート。実はひとえに農業用マルチシートと言ってもかなりの種類があるんです。
今回は黒や透明などの色の効果の違いや土に還るものなどの素材の違いなどマルチシートの基本について選び方をお話いたします。
多くの農業用資材メーカーの営業さんとお話する機会の多い管理人が、メーカー営業さんから聞いたお話を踏まえて、実際に自身が働く資材屋でよく売れているものを踏まえておすすめのものをご紹介します!
マルチシートを使う意味とは
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農業用マルチシートとは畑の作物を植える畝の上にかけるビニールやプラスチックのことです。ではマルチをかけることでどんな効果があるのでしょうか。おさらいをします。
- 土壌温度の激しい変化を抑える
- 土壌の保湿効果
- 肥料などが雨で流れないようにする
- 病原菌の被害の抑制
などの効果があります。他にも色によって雑草の抑制効果や害虫が来るのを防ぐ効果があるものがあります。
最近はじゃがいもの土寄せをしなくても良くなるという理由で黒色のマルチシートが使われることもあるそうです。
各色の効果を知ろう!農業用マルチシートの色による効果の違い
農業用マルチシートというと一般的に黒色を思い浮かべる方が多いと思いますが、実はたくさんの色があります。各色のかんたんな特徴をまとめると次のようになります。
- 黒色:遮光による雑草抑制効果と土の温度上昇を抑制
- 透明:土の温度を光を通して上げ、さらに保温・保湿
- シルバー:害虫避け効果と地面の温度を上昇防止
- 白黒:リバーシブルで黒とシルバーの効果を表と裏を変えることで得られる
- 銀黒:虫除け効果と遮光効果がある
それぞれ詳しく説明していきます。
黒色マルチシート
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黒マルチのいいところは何よりも遮光効果!光を通さないために雑草が育つのを防いでくれます。その防草効果に加え、遮光をするため太陽光を通さす地面の温度が上がるのを抑えますが、マルチシート自体が黒いためシート自体が熱くなり地面の表面は熱が移って温度が上がることがあります。ですので夏場の使用はやめておきましょう。
一番一般的な色で比較的やすいお値段で手に入りやすいマルチシートです。そんな黒マルチのおすすめはこちら
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透明マルチシート
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透明なため太陽光を通し地面に届けることができるため地面の温度を上げるのにとても効果的なマルチシートです。また地面にシートを掛けているのであがった地面の温度を保温・保湿効果もあります。冬や春先などビニールハウスに似たような効果も期待できますが、逆に夏場は地面の温度が上がりすぎてしまうので作物での使用を控えましょう。土壌だけの場合土壌殺菌効果で使われることもあるようです。
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シルバーマルチシート
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シルバーマルチの特徴は何よりも虫除け効果です。アブラムシやナモグリバエ、アザミウマなどを光の乱反射で忌避する効果があります。またその光の照り返しの効果で果実などの色付けをまんべんなくできるという効果もあります。もちろん保温効果・地面の温度を上昇を防ぐ効果もあり、防草効果も多少あります。
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白黒マルチシート
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白黒マルチシートは両面が違う色で白色と黒色になっています。そのため自分が使いたい効果をリバーシブルで得ることができます。表を白にして光の反射で果実の色づきを助けながら、裏面黒で雑草抑制、地面の温度上昇を抑えることができます。
夏場と冬場で表裏を変えて年中使うこともできます。それぞれのいいところをとったマルチシートです。
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銀黒マルチシート
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こちらもシルバーマルチと黒マルチのいいとこ取りのマルチシートです。シルバー面が光を反射させることでアザミウマやアブラムシなどの害虫忌避の効果があり、さらに果実の色付けも助けてくれます。
そして遮光性の高い黒いマルチで地面の温度上昇の抑制や防草効果があります。
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まとめてみると以下になります。
防草効果 | 土温度上昇 | 害虫忌避 | 果実色付 | |
黒マルチ | ◎ | よく抑える | ✕ | ✕ |
透明マルチ | ✕ | よく上げる | ✕ | ✕ |
シルバーマルチ | △ | 抑える | ◎ | ◎ |
白黒マルチ | ○ | 抑える | ○ | ◎ |
銀黒マルチ | ○ | 抑える | ◎ | ◎ |
また以前こちらで紹介したタイベックシートもマルチシートとしてよく選ばれます。
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色以外で選ぶマルチシートの種類
上を読めばどの色のマルチシートが一番適しているのかが見えてきたと思います。ただ実は色以外にもマルチシートを選ぶポイントがいくつかあります。それが以下のポイント
- 素材:通常はビニールやプラスチックだが、生分解という土に還る素材もある
- 穴の有無:株を植えるために最初から穴が空いているものと空いていないものがある
- 穴の株間:植える作物によって株間が違うため穴も株間の間隔によって違う
- 穴の条数:一つの畝に何列で植えるかによって違う
- 穴の条間:列の間隔のサイズ
- 穴のサイズ:もちろん植える作物の株の大きさによってサイズが変わる
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どんな作物にどのような穴が適しているのかは難しいところですが、条数やどの作物にどんな穴が適しているのかわかりやすいサイトが有りましたのでご紹介します。
よくある穴開きマルチにはなどの数字が書いてありますが、実はあの数字で上の見るべき穴のサイズなどがわかるようになっています。
穴開きマルチの記号でサイズを見る方法
例えば9230という場合は
マルチの幅が95cmで、穴の列数が2列、株間が30cmとなります。その見方は一桁目の数字と二桁目の数字と三四桁目の数字の3つに分けてみます。
- 一桁目の数字はマルチシートの幅:9=95cm、3=135cm、5=150cmとなる
- 二桁目の数字は穴の列数:1~7列がありその数字が書いてある
- 三四桁目は株間:穴と穴の間隔で15=15cm、30=30cmとなる
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生分解性プラスチックマルチシートとは
生分解マルチとは土に還るマルチシートです。管理人もオーストラリアのワーキングホリデーでマルチシートを扱ったことがありますが、作物を育て終わったマルチシートを回収するのは本当に重労働ですよね。土が絡みついて重い上にすぐに破れて回収しづらいのなんのって。
その点微生物によって分解されるマルチはロータリーなどで土をかき混ぜるだけなので回収の手間がかかりません。非常に楽に作業ができますがもちろんデメリットもあります。
- 価格が高い
- 土壌が乾きやすい
- 完全に分解されないもしくは時間がかかる
などのデメリットが挙げられれます。ただどんどん技術も上がってきており生分解性マルチを使っている農家さんも増えてきたり、通常のマルチと併用して状況によって使い分けている農家さんもいるようです。
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マルチシートの張り方
マルチシートを張るに当たって一つだけ意識しましょう。それは
シートをピーンと張る
という点です。またマルチシートの他にマルチをカットするハサミやカッターとできれば仮止めできるシートピン、途中風に飛ばされないための重しがあれば張りやすくなります。それを踏まえて順序を説明していくと、
- 畝を作る:サイズを決めて畝を作り上部を平にしていきます。
- マルチを張る作業に入ります。始まりは30cmくらい余分に余らせてシートを被せていきます。
- 途中シートに重しを載せ、必要に応じてピンで仮止めしながらシートを張っていきます。マルチシートには中心線が書いてあるものもあるのでそれを基準に。
- 最後も30cmくらいの余裕を持ってカットします。
- 次に敷き始め部に土をかぶせて足で踏み固めながら固定します。
- 続いて片方のサイドも同じ用に土を踏み固めながら固定
- 今度は逆サイド側ですが、こちらからシートがピーンと張るように引っ張りながら固定し土を踏み固めて行きます。
- サイドに敷き終わり部もピーンと張りながら固定し土をかぶせて完成
ピンを使ってはいませんが、下の動画がわかりやすいと感じましたのでご参考に。
マルチシートをかんたんに張るための便利アイテムもたくさん発売されています。その中でも人気のものをご紹介。
マルチシートを張るためのらくらく器具
マルチ張り器
意外とくるくるとシートを張っていくのは大変です。特に畝が長ければ長いほど張りにくいもの。それを解消する便利アイテムをご紹介。牽引させてシートを張っていくのでシートを持ち上げておく必要も腰をかがめる必要もなしで作業性向上間違いなしです。
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穴あけ器
穴が空いていないマルチを買ってしまったとか、急に開ける必要性が出たとか、自分の間隔で開けたい方にはこちらがおすすめです。マルチシートに穴をあける道具です。
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マルチ抑えピン
マルチシートを張っていく際に仮止めをしておくプラピンです。あるだけでシート張りが楽に作業ができますのでできればあったほうがいいアイテム
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まとめ
農業の野菜の栽培に欠かせない農業用マルチシートのお話を今回はさせていただきました。マルチを使わないという方もいらっしゃいますが、本気で育てる場合は確実に必要なアイテムです。
昔ながらに藁などをマルチの代わりに敷くという昔ならではの方法も効果的ではありますが、やはりマルチシートを使うのが簡単です。
上の記事をしっかり読んでご自分にあったマルチシートを選んでいただきたいと思います。